【皐月賞2022】

■傾向と対策

21年(稍) 36.3-47.3(35.4-35.4)-37.0 2:00.6

20年(稍) 35.6-49.3(37.1-37.5)-35.8 2:00.7

19年(良) 34.8-48.6(36.4-36.8)-34.7 1:58.1

18年(稍) 35.5-48.0(35.6-36.5)-37.3 2:00.8

17年(良) 35.1-48.2(36.3-36.5)-34.5 1:57.8

16年(良) 34.2-48.1(35.7-36.4)-35.6 1:57.9

15年(良) 35.2-48.3(36.2-36.5)-34.7 1:58.2

上記は路盤改修後の皐月賞レースラップ。良馬場では高速決着が定番。終盤の早さだけで高速決着に押し上げたわけではない≒巡航速度の優位性が求められていることが分かります。巡航速度の優位性は距離短縮指向の能力有無である程度は推し測ることができます。良馬場での好走馬にはコディーノロゴタイプイスラボニータペルシアンナイト・アルアインがいるように、マイルGⅠで活躍する能力が優位に働くということを示しています。道悪馬場では特殊なレース展開ばかりですが、馬場状態に関わらず持続力優位の能力が活きやすいレースであることは明らかです。

 

21年(16頭) 1着:[04-04] 2着:[01-01] 3着:[10-08]

20年(18頭) 1着:[12-07] 2着:[06-04] 3着:[10-09]

19年(18頭) 1着:[07-07] 2着:[04-04] 3着:[04-05]

18年(16頭) 1着:[04-04] 2着:[05-05] 3着:[02-02]

17年(18頭) 1着:[05-05] 2着:[05-05] 3着:[05-03] 

16年(18頭) 1着:[12-10] 2着:[15-13] 3着:[09-05] 

15年(15頭) 1着:[11-07] 2着:[05-03] 3着:[02-02]

上記は1~3着馬の位置取りを[3角-4角]の順で示したもの。路盤改修後の皐月賞好走馬で4角5番手以内だったのは14頭で占有率は77%。一方で4角10番手以下から好走したのは16年の1,2着馬。前後半58.4-59.5のハイペースに加えて直線強烈な追い風(向こう上面向かい風)だったことから前後の利が大きかったレースだったと記憶しています。このことから先行力のある馬(≒持続力寄りの能力バランス)はレース運びにおいて優位であるということを察することができます。直線の短さだけが先行力を優位にしているのではなく、序盤のポジショニング争いにおいても必要な能力であることが要因だと考えます。さらに細かくみていくと4番人気以下で好走したのは12頭。うち9頭が4角5番手以内からの好走でした。例外の2頭は16年1着ディーマジェスティ・20年3着ガロアクリーク・21年3着ステラヴェローチェの3頭。「激走の資格は先行力にあり」と考えてよいでしょう。

 

・距離短縮指向のスピード(良馬場)

・先行力を主体とした立ち回りの巧さ

・持続力優位の能力バランス

 

■各馬分析

・ドウデュース

12.6 - 10.6 - 11.1 - 11.9 - 12.1 - 11.9 - 11.2 - 12.1 1:33.5 朝日杯FS

朝日杯は展開&馬場から距離短縮指向の追走力が削がれ、末脚力が問われたレース。1800mを2連勝してきたドウデュースは他馬に比べ末脚優位で好走条件に合致していました。アイビーSや弥生賞の走りからも先行力と末脚力をバランス良く備えていると評価できます。母Dust and Diamonds(米国短距離ダート重賞を複数勝利)にハーツクライを迎えた血統。Seattle SlewGone Westを抱えたハーツクライ産駒ということからも全体的なスピードや持続力に良さがありそうです。一方で、末脚のキレや成長力にはあまり期待しない方が良いと思います。バランスの良い能力や武豊騎手を含めた立ち回りの巧さは魅力的ですが、高速馬場では末脚力不足、道悪馬場では馬力不足から詰めの甘さに注意したいです。

 

・ダノンベルーガ

12.7 - 11.3 - 12.1 - 12.5 - 12.5 - 12.5 - 11.3 - 11.2 - 11.8 1:47.9 共同通信杯

滞空時間の長い末脚など能力の方向性は典型的なハーツクライ産駒。1戦1勝で迎えた共同通信杯は中盤まで緩く終盤ビッシリ早いレースを不利なく真っすぐ伸びて勝利。末脚の破壊力は世代屈指で日本ダービーも勝機のある好素材。皐月賞へ向けての懸念は、先行力を主体とした立ち回りの巧さが不足していること。末脚の滞空時間に優れる一方で、急加速力不足からくる小回り非対応力や経験値のなさから追走力不足などが露呈するようだと「負けて強しの皐月賞日本ダービー最有力」というシーンを想像してしまいます。

 

・イクイノックス

12.8 - 11.4 - 12.0 - 12.4 - 11.7 - 11.6 - 11.0 - 11.9 - 11.4 1:46.2 東スポ杯

血統的推測とパフォーマンスの食い違いから評価の落としどころが難しい馬。母シャトーブランシュや半兄ヴァイスメテオール、父キタサンブラックから血統的には消耗戦や馬力型のレースに強さを魅せるはずです。しかし、新馬戦やゴールまで加速する展開を後方から突き抜けた東スポ杯からは末脚が活きる高速決着向きのパフォーマンスを示しています。おそらく持続力優位の末脚が一番の武器だとは思いますが、走りや血統から総合力の高さも世代上位レベルで間違いないと考えます。ただ完成度という点ではまだまだ先に頂点があるのではないだろうかという印象を持ちます。

問題はぶっつけ皐月賞ローテ。新しいことへの挑戦を否定する気はありませんが、キタサンブラックが鍛えて強くなった馬だということ、レース経験値は唯一無二であることなどから考えると、あまり購買意欲が湧く状況ではありません。能力の高さと私情の狭間に揺られつつ最終評価を下したいと思います。

 

・キラーアビリティ

12.6 - 11.3 - 12.0 - 12.2 - 12.0 - 12.0 - 12.2 - 12.2 - 11.7 - 12.4 2:00.6 ホープフルS

12.9 - 10.8 - 11.7 - 12.3 - 12.3 - 12.3 - 12.4 - 12.2 - 11.8 - 10.8 1:59.5 2歳未勝利

ホープフルSの勝利も見事ですが、この馬の特性が最も表れていると感じるレースは2歳未勝利戦。8月下旬かつ雨量皆無の小倉競馬場、そしてこの未勝利戦は土曜最初の芝レースということでパンパンの良馬場で高速馬場という状況。ここで魅せた「高速決着を差す競馬」がこの馬の本質だと考えます。米国2歳G1馬の母にディープインパクトを迎えた血統。血統的には末脚の活きる高速決着に適性があり、それが爆発したのが未勝利での圧巻のパフォーマンスだったと考えます。

皐月賞へ向けての懸念は、成長力と底力不足。完成度の早さは母を受け継いでおり、米国血統が主張していると仮定するれば2歳暮れからさらなる上積みが見込みづらいという懸念があります。また、欧州色の薄さからクラシックレベルでは底力不足≒ハイペース耐性が劣る可能性があります(ホープフルS=牡馬としては軽量なディープインパクト産駒がワンツー)。「高速決着を差す競馬」が本質のキラーアビリティにとって良馬場想定では高速決着が定番の皐月賞は適性条件にありそうですが、成長力や底力不足から詰めの甘さがありそう。さらにG1で期待を裏切り続ける横山武史騎手を思うと、ホープフルSの成功体験を捨ててまで差す競馬をしてくる心理状態にあるとは考え難い。人気ならば期待値は低いそうです。

 

・ジオグリフ

12.7 - 11.3 - 12.1 - 12.5 - 12.5 - 12.5 - 11.3 - 11.2 - 11.8 1:47.9 共同通信杯

12.6 - 11.9 - 11.9 - 11.9 - 12.0 - 12.0 - 12.2 - 12.1 - 12.5 1:49.1 札幌2歳S

ここまでの産駒傾向をみるに、ドレフォンは牝系の遺伝力を尊重する種牡馬だという仮定が成り立ちます。この仮定が正しいとすれば、ジオグリフは母アロマティコ(秋華賞3着)や近親インティライミ(宝塚記念3着)といったアンデスレディー牝系の影響を受けているはずです。この牝系の特徴は持続力優位な能力バランスと小回り適性の高さです。

それを裏付けるかのように、中高速のミドルで流れた札幌2歳Sを最後方から捲る競馬は圧巻のパフォーマンスでした。血統的に急加速力は弱点となりそうなポイントですが、末脚力がモノをいうラップとなった共同通信杯では他馬1キロ増を背負いながら先行策から抜け出し2着した点は評価に値します(斤量はキレに影響を大きく与える要素)。朝日杯FSに関しては「マイルの馬にしたくない」というルメール騎手の意志が伝わる競馬。それでも最後方&伸びない外を回して5着は末脚のキレが水準レベル以上にないとできない芸当です。

そしてアンデスレディー一族のもうひとつの特徴が活躍馬は成長力があるということ。アロマティコやインティライミのように3歳時から活躍した馬はその後もジワジワと成長し活躍し、サンバレンティンアンデスクイーン、アルバートオーバーザウォールのように古馬で活躍する馬もいます。この成長力に、快速馬ドレフォンのスピード≒米国血統が高速馬場適性を補完するようならば、すでに持続力優位の能力バランスや小回り適性を示しているジオグリフにとって高速馬場の皐月賞は適性条件となりそうです。

 

ジャスティンロック

12.9 - 11.7 - 12.9 - 12.9 - 12.4 - 12.6 - 12.2 - 11.7 - 11.6 - 12.4 2:03.3 京都2歳S

キンカメ系は牝系尊重型の種牡馬が多く、リオンディーズもその類と推測。母父アッミラーレはサンデー産駒ながら全勝ち星をダートで挙げた馬。祖母はホクトベガの半妹。牝系の持続力が引き出されたレースぶりで、京都2歳Sを捲りながら押し切った内容はまさにそれ。弥生賞は初輸送な休養明けの影響から力んで走っていたようで、道中の不利もありながら4着。前哨戦としては及第点の走りをしていました。

皐月賞へ向けた懸念は距離短縮指向のスピードが未知数であること。ポジティブに考えるならば、父リオンディーズは朝日杯FSを優勝し、近年の皐月賞で4角10番手以下がワンツーした超絶ハイペースを前々から踏ん張り掲示板を確保した馬。父のスピードと牝系の持続力がうまく引き出されているならば皐月賞でも好走の芽は出てきます。

 

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※追記

メンバー状況が2007年の皐月賞に似ています。

若葉Sを岩田騎手で押し切り&クラシックに縁ある牝系という点で、ヴィクトリーとデシエルト。中山重賞勝ち&世代上位安定勢力&非社台系という点で、サンツェッペリンとビーアストニッシド。トニービン系の共同通信杯勝ち馬&1枠1番&ダービー有力との呼び声高いという点で、フサイチホウオーとダノンベルーガ。さらには枠順の並びや、武豊が1番人気という点も酷似しています。

デシエルト、ビーアストニッシドともに淀みない展開を生み出しての逃げ切りで、少なくとも弱いわけがありません。ハナを叩けなくとも、緩むようならばデシエルトが行くはず。その後ろにビーアストニッシドがついていくだけで、実質は岩田騎手のペースで2頭が走れることになります。馬場の回復は適性とは逆行する条件ですが、岩田騎手のペースが追いかける馬たちの末脚を削ぐものだとすれば可能性は広がってきます。

2007年の皐月賞があるのか、興味深いところです。

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