【ホープフルS2022】

■ミッキーカプチーノ

22年 12.4-10.9-11.9-12.6-12.2-11.9-11.9-11.8-11.5-12.0 / 1:59.1 (2:00.4)

21年 12.5-11.3-12.3-12.8-12.7-11.9-11.5-11.7-11.4-12.5 / 2:00.6 (2:01.7)

20年 12.9-11.8-13.1-13.2-12.5-11.9-11.7-11.7-11.4-12.0 / 2:02.2 (2:02.0)

19年 12.6-11.1-12.0-12.0-12.0-11.5-11.6-11.6-11.8-12.7 / 1:58.9 (2:00.4)

18年 12.5-11.1-12.0-12.2-12.3-12.1-12.1-11.9-11.4-12.0 / 1:59.6 (2:01.2)

17年 12.6-11.5-12.3-12.7-12.9-12.4-12.0-11.7-11.3-12.0 / 2:01.4 (2:02.5)

16年 12.3-11.3-12.7-12.2-12.5-12.4-11.7-11.9-12.1-11.9 / 2:01.0 (2:02.0)

15年 12.5-11.4-12.2-12.7-12.9-12.7-12.7-12.3-11.6-11.6 / 2:02.6 (2:03.4)

14年 12.5-11.3-12.2-12.3-12.5-11.9-11.8-12.1-11.9-12.3 / 2:00.8 (2:01.6)

※カッコ内は馬場差補正タイム

 

中山競馬場コース改修以後の葉牡丹賞を見ていきます。葉牡丹賞勝利馬はダービー馬となったレイデオロが筆頭株でしょう。そのほかにもトーセンバジル、メートルダール、ジェネラーレウーノ、ノースブリッジらがいるようにその後出世していく馬たちが多く存在します。今年はミッキーカプチーノが1分59秒1と歴代2位のタイムで勝利しました。歴代最速は2019年グランデマーレが記録した1分58秒9ですが、馬場差補正すると2022年と2019年は遜色ないタイムだということが分かります。

そこでラップ推移を見ていくと、2019年は序盤12.0秒を連発かつ中盤以降は11秒中盤を刻み続ける早いラップ推移。この早いラップを馬群が集団のまま追走することで、距離短縮指向の追走力が問われたレースだと考えられます。グランデマーレがその後マイル戦で全体的なスピードを発揮できた場合に好成績ということからも理解できるはずです。また、終盤に向かって失速するラップ推移であること、メンバーほとんど(1~8着馬)が同様の上がりを計時していることが高速馬場を利用してなだれ込んだだけであることから、好タイムの要因は中盤が高速馬場を利してすこぶる引き締まったことだと考えられ、額面のタイムほど評価をしてはいけないレースだと考えられます。

今年のラップ推移(赤線)は、序盤早く→中盤やや緩く→終盤やや早いといったバランス。序盤の早さこそあれど2019年のような距離短縮指向のスピードが問われたとまでは言えず、中盤やや緩んでからのスパート勝負はいわゆる中山中距離のそれ。レースレベルは葉牡丹賞だけでいえば歴代ナンバーワン。レイデオロやジェネラーレウーノを軽く超えるレベルを示しており、2歳重賞優勝レベルである走りだったと言えます。これをノーステッキで悠々抜け出したミッキーカプチーノは順調ならば皐月賞日本ダービーが見えてきます。余談ですが10/9東京2000mでデビュー勝ち・12/3葉牡丹賞勝利でホープフルSへの臨戦過程はレイデオロと同じ。2戦ともノーステッキで消耗度も少ないことは好印象。ここで勝利を収めて、一気に春の主役へと名乗りを挙げてほしいと思います。

 

■ファントムシーフ

先日Tweetしたように、実質2×2の濃厚クロスが存在するファントムシーフ。ただでさえ、父Harbinger×母父Medaglia d'Oroという血統構成が日本競馬では重厚とされるなかで実質Dansiliの2×2となるといわゆるコテコテのタイプが出てくると推測できるはずです。HarbingerRail Linkを輩出した血が濃いことからクラシックディスタンスやタフな競馬で能力を発揮すると想像されるなかで、ファントムシーフが魅せたのが前走の野地菊Sです。

12.6 - 10.9 - 12.8 - 12.5 - 12.6 - 12.6 - 12.4 - 11.4 - 11.0 - 11.4 野地菊S

溜めに溜めて上がり特化のラップ推移。序盤・中盤が緩すぎてレースレベルの判断は難しいところですが、全馬たっぷり余力を持ったままスパートとなったレースで着差をつけ勝利したことは評価すべき事案です。ファントムシーフ自身のラスト3Fは11.4‐10.8‐11.3といったところ。先ほどの血統的特徴から推測されるように、日本競馬ではキレ負けの懸念があるなかでこの走りは非常に価値があるものだったと評価できます。またレース後に福永騎手が明かしているようにあえてキックバックを受ける位置取りをするなど育成も兼ねていたようです。

中距離でのトップスピードという部分では及第点が与えられます。さすがに日本主流血統を持つ馬たちよりギアチェンジ能力(≒急加速力)は劣りそうですが、それを望むのは欲張りといったところです。タフな競馬や持続力要求度が高いレースでの能力発揮が期待できることから、2歳馬にとって非常にタフな競馬となりやすいホープフルSは条件好転といえ前走よりもさらにパフォーマンスを挙げてくる可能性が期待できます。

 

■トップナイフ

36.0‐37.4‐24.8‐24.1 / 2:02.5【2:02.7】未勝利(22.09.04) トップナイフ

34.9‐38.9‐25.0‐23.3 / 2:02.1【2:02.4】未勝利(19.08.31) ミヤマザクラ 

トップナイフが未勝利勝ちしたのは札幌2000m。それまでの競馬とは一変してグッとペースを引き上げての勝利。テイエムオペラオーやステラウインドがいる母系に父デクラレーションオブウォー(欧州活躍の米国血統)を迎えた欧米色の強い血統構成から全体的スピードを活かす競馬がバッチリはまった印象。2歳札幌2000mでは歴代3位のタイムで、馬場差補正後のタイムは2分02秒7。同コースで馬場差補正タイムが2分2秒4だったミヤマザクラは未勝利後、京都2歳S2着→クイーンC1着と活躍。これに0.3差と迫っていることからもトップナイフの未勝利が好タイムであったことがうかがえます。

日本競馬的キレの成長に期待を寄せるのが酷な血統であること、札幌2000mをミドルペースから好タイムで逃げ切ったことなどから、このまま全体的スピードを活かしてクラシック前哨戦までは先行力と失速耐性を武器に頑張ってくれるだろうと見込んでいましたが、鞍上の横山典弘騎手ら陣営はさらにうえを目指していたようです。その様子が野路菊Sでうかがえます。

未勝利のパフォーマンスを見ていればスローペースに付き合わず自分でペースを引き上げていけばいいところを、あえて控える競馬を選択。逃げの策だけではこの先遅かれ早かれ行き詰まることを知る騎手だからこそ、結果を捨ててでも教育的競馬を選択したのでしょう。すぐにその効果はあらわれ、番手で競馬をすることを覚えたトップナイフは萩Sを勝利。京都2歳Sでは4角で不利を受けながらもしぶとく末脚を伸ばして2着。少しづつですが競馬の幅を広げつつあります。

血統的背景やこれまでのパフォーマンスから武器は全体的なスピードと失速耐性だと思われます。そこに一本調子な競馬だけにならないよう、教育によって少しでも末脚を引き出そうとする陣営の努力が加わっているように思えます。日本主流血統もなく、競馬も地味で人気は出ないタイプですがその走りは実に堅実です。未勝利勝ちのパフォーマンスから能力があることは示していますし、萩S京都2歳Sと連続でオープンクラスを好走している実績もあります。2歳馬にとって暮れの中山2000mはタフな舞台ですが、だからこそこのシブとさが活きるはずです。