【ヒヤシンスS回顧】

レース直後から「ムムム」と感じたのが今年のヒヤシンスS。この胸のざわつきの正体を言語化し明らかにすべく、ヒヤシンスS回顧というかたちで記しておきたいと思います。

 

24年 34.6-24.5-37.7 1:36.3 ラムジェット

----------------------------------------------------

13年 34.0-24.3-38.3 1:36.6 チャーレーブレイヴ

21年 35.9-24.9-36.0 1:36.8 ラペルーズ

08年 34.0-24.6-38.4 1:37.0 サクセスブロッケン

04年 33.6-25.3ー38.2 1:37.1 カフェオリンポス

15年 35.5-24.8-36.8 1:37.1 ゴールデンバローズ

 

上記はコース改修以後のヒヤシンスS(良馬場)をタイム順に並べたものです。ご覧のとおり今年のラムジェットは良馬場における最速タイムでヒヤシンスSを勝利したことが分かります。ラップバランスをさらに分かりやすくするため中間2Fを3F換算に置き換えると下記のようになります。

 

24年 34.6-36.8-37.7 1:36.3 [+0.6] ラムジェット

----------------------------------------------------------

13年 34.0-36.5-38.3 1:36.6 [+1.5] チャーレーブレイヴ

21年 35.9-37.4-36.0 1:36.8 [+2.4] ラペルーズ

08年 34.0-36.9-38.4 1:37.0 [+1.7] サクセスブロッケン

04年 33.6-38.0ー38.2 1:37.1 [+0.3] カフェオリンポス

15年 35.5-37.2-36.8 1:37.1 [+0.8] ゴールデンバローズ

※馬場差は21年のみマイナスで他は大差なし

※08年は直線で強烈な向かい風

 

おおまかに見ると上記レースのラップバランスは序盤から突っ込んだ"消耗型”と序盤~終盤に差がない"効率型”のふたつに分けられます。効率型となった21年・15年からはG1馬の輩出がありませんでした。効率型のラップバランスではダートG1で必須条件となるハイペース耐性(≒失速耐性)が問われなかったことが最大の要因でしょう。それを裏付けるかのように、消耗型となった04年カフェオリンポス、08年サクセスブロッケンはもちろん、13年からも3着コパノリッキーがその後G1馬となっています。若いうちにタフなレースを経験かつ時計的裏付けも示すことの重要性を物語っているのではないでしょうか。

次に、[  ]内に示した数値は同日に行われたフェブラリーSとのタイム差です。0.3秒差と迫ったのがカフェオリンポス、次いで0.6秒差に迫ったのがラムジェットです。

 

▼2004年                

35.8-25.0(37.5)-36.0 1:36.8 アドマイヤドン 

33.6-25.3(38.0)ー38.2 1:37.1 カフェオリンポス  

▼2024年

33.9-24.0(36.0)-37.8 1:35.7 ペプチドナイル

34.6-24.5(36.8)-37.7 1:36.3 ラムジェット

 

04年ヒヤシンスSが0.3秒差と迫った04年フェブラリーSは序盤3Fが35.8秒・勝ち時計が1分36秒8。この序盤3Fと勝ち時計はともにフェブラリーS(コース改修以降の良馬場)で最も遅いタイムとなっています。これだけ序盤が遅いと全体の時計が押し上げられませんのでタイムアタックという観点での価値はないに等しいものとなります。

一方で、24年ヒヤシンスSが0.6秒差と迫った24年フェブラリーSの序盤3Fは33.9秒で、これは06年と並んで最速タイのラップです。06年はそこから23.5秒を刻んで直線を37.5秒で駆け抜ける超抜レース。勝ったのはあのカネヒキリですから単純なレース比較では、6歳でG1初勝利となったペプチドナイルが手も足も出ないのは致し方ないといったところです。24年フェブラリーSはそれでも06年フェブラリーSから中盤で0.5秒、終盤で0.3秒劣るだけに踏みとどまっています。こちらはタイムアタックという観点での価値はそれなりにあったことが認められます。

これらのことを総合的に考えると、同日のフェブラリーSに0.3秒差に迫った04年と0.6秒差に迫った24年ではどちらの内容を評価するかは明白になります。

 

■総括

① 勝ち時計は良馬場で最速タイム

② G1との相関性が高い消耗型のラップバランス

フェブラリーSと0.6秒差≒古馬オープン級

 

今年のヒヤシンスSはハイレベルな一戦でした。良馬場最速タイムは純粋に評価すべきで、古馬オープン級のパフォーマンスを3歳2月の時点で示したことは今後の飛躍におおいなる期待が膨らみます。その裏付けとなるのがGⅠとの相関性が高いラップバランス"消耗型”であることや、水準級の時計を叩き出してきた同日フェブラリーSと0.6秒差であることが挙げられます。

特にレース上がり3Fを1秒上回る末脚で突き抜けたラムジェットは秀逸の一言。失速耐性に優れる末脚が武器であり得ない位置から猛然と追い込むシーンがデビュー戦から連続で繰り広げられていました。血統的には祖母ラヴェリータが日本競馬ファンには馴染み深いですが、5代母Classy'n Smart(カナダ2歳女王)の仔にはDance Smartly(カナダ三冠)・Smart Strike(説明不要の大種牡馬)がいる名牝の血脈。ここにゴールドアリュールマジェスティックウォリアーを父として迎えた血統構成。父・母父からも日本ダートG1馬が輩出されていることを考えると今後の未来は明るいといえます。なお脚質的に前後内外の不利を受けやすいことは多少覚悟が必要ですが、今後の米国遠征などの経験から追走力なども含めて成長を見届けたいです。順調なら2025年フェブラリーSで本命を打つと宣言しておきます。

いずれにしても、ラムジェットのみならず敗れたアンクエンチャブル以下も能力を示しています。このヒヤシンスS組の今後の飛躍を期待しつつこのあたりで回顧を終わらせていただきます。