【フェブラリーS2023】

フェブラリーS考察

 

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・ベテラン馬激走条件

【1】とにかく強い : 該当なし

【2】ワンターンマイルG1実績 : テイエムサウスダンソリストサンダー

【3】根岸S勝利 : 該当なし

南部杯好走馬 : ヘリオス

根岸S酷斤量克服馬 : 該当なし

 

今年の出走予定メンバーを取扱説明書を参考にするとテイエムサウスダン・ソリストサンダー・ヘリオスの3頭がピックアップされます。それぞれ特徴と激走候補に該当するのかどうか見ていきましょう。

 

テイエムサウスダン

米国血統の1400巧者で先行力とパワーが武器。スピードレンジと失速耐性から考えて1400m特化型の能力を持つため、距離短縮ではスプリント指向のスピード不足、距離延長ではマイル指向の末脚不足という欠点が露呈します。22年根岸Sは額面は差し競馬となりましたが例年にハイペースで流れたこと、22年フェブラリーSは超高速馬場&序盤の負荷が極めて軽いといった要素が揃ったこと。昨年同時期のパフォーマンスを再現する可能性を追い求めるのは酷と考えます。もちろん当時の陣営がそれら能力バランスを熟知していながらマイルに適応させようと苦心させた結果がこのような功績となっているのでそれに関しては称賛の言葉しかありません。

前走はトモに甘さが感じられたように、デキはイマイチだったのかもしれません。体重減でも緩い馬体でしたが1400mであの程度の先行で直線見せ場もなく失速は成長曲線の下降を疑います。それは無理もなく、1400巧者を1600指向に適応させたと思えば今度は1200mで好走しろとムチ打ってきたのですから消耗もするでしょう。

そしてここにきて岩田康成騎手からルメール騎手への乗り替わり。根岸S時にも言及したので詳しくは割愛しますが、テイエムサウスダンの失速耐性を引き出すタイプではない騎手への乗り変わりは悪手でしかありません。状態もイマイチで中2週での変わり身疑問、昨年の再現可能性も低く、成長曲線も下降線、さらには人馬のミスマッチとくれば厳しい評価となります。

 

ソリストサンダー

末脚の総合力に優れた晩成型の1700巧者。ソリストサンダーは距離延長によって芝指向の末脚を活かしてパフォーマンスを上げてきた馬です。短距離指向の追走力やパワーの優位性が要求されるレースは適性外だったと割り切ることができます。22年根岸Sは近年にないハイペースで流れ、22年南部杯は不良馬場でスプリント能力のある馬が2~4着する質感を先行と、短距離指向の追走力不足を露呈させました。

武蔵野Sや南部杯といったワンターンマイル重賞での好走が複数回あり、昨年のフェブラリーSも先行力がモノをいう質感のなかで末脚を伸ばして4着と適性はあります。今年は都内でも強い冷え込みや降雪など寒気の影響が大きく、少なくとも近3年よりは時計の掛かるダートで開催が進んでいます。今週末を降雨量ゼロで迎えるようならば相応の時計が掛かるような馬場が用意されると考えます。

門司Sから中1週の臨戦過程に泣いた21年、超高速馬場で追走力不足に泣いた22年から条件は好転します。「距離延長指向の末脚が活きるワンターンマイル」となったフェブラリーならば今回のメンバーでも適性は筆頭クラスで十分に狙いは立ちます。あとは状態次第ですが、勝馬調教班は「GO!」の判断を下しました。

 

ヘリオス

準スプリンターのオルフェーヴル産駒。スプリント指向の先行力が表面的でしたが、それまでよりも緩い展開でも末脚を伸ばしたように加齢とともに少し成長がありました。そのあたりはステイゴールドの血が成せる業でしょうか。

【南部杯2022】 - Nearco Note

南部杯ではヘリオスのことをこのように評価しておりました。
この仮説は不良馬場の南部杯を2着といいうことで立証。根岸S2着馬がその後の地方交流重賞で惜敗を繰り返したのは決着時計の差にありました。芝指向のスピードを持つヘリオスにとって時計が掛かるロカール競馬場は適性が真逆となります。前半がほぼ直線というただでさえ時計が出やすい盛岡1600mで、道悪の高速決着となり距離短縮適性の要求度が高まったことを利して2着したのがヘリオスでした。3,4着にも短距離に良績のある馬が浮上し、同ポジションを走った16~1700mに適性のあるソリストサンダーが沈んだことからも22年南部杯に問われた適性は明確であると思います。

さて、転厩後初戦の根岸S。陣営は手探りといい、急ピッチに乗り込まれたことからも状態面はそこそこ止まりだったのでしょう。そのことからも前走をノーカウントにするのは受け入れます。ただ、状態が戻ったとしても距離延長かつ末脚の要求度が高まる東京ダ1600mでは好走可能性が低下すると判断します。ダート馬としては小柄な馬体重(前走466kg)にとって斤量58kgは急加速力を削ぐ要素です。これに輪をかけてパサパサの良馬場となってしまえばさらに距離延長指向の能力が要求されるはずです。先行策から終盤もまとめるのは酷となり人気薄の激走候補とするにはネガティブ要素が多すぎると判断します。

 

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三浦皇成いよいよGI制覇か」といった機運が高まりつつあるなかで飛び込んできた衝撃の一報がギルデッドミラー引退。三連覇の懸かるカフェファラオらが早々にサウジ遠征を決定するなか、国内ダート上位馬で残っていたクラウンプライドのもとへも招待状が届きフェブラリーSはさらに空洞化。その状況下にあって「三浦念願達成なるか」という話題は最大トピックだっただけにギルデッドミラーの引退は文字通り衝撃でした。根岸S後はかなり慎重な判断をしていたレモンポップ陣営がこの一報を機に参戦を決定。あらかたレモンポップ不参加の方向で話がまとまっていたのか戸崎騎手はドライスタウトでの参戦をすでに表明。どこに真実があるのかは分かりませんが、絡み合う運命と欲が現在の状況に至っていることは間違いなさそうです。

 

■レモンポップ

先行力と末脚のバランスが素晴らしく総合力の高い馬。末脚は米国血統が主張しているようにワンペース寄りの質感。これまで先行しながら10戦中8戦でメンバー上位の上がりを計測しているように他馬を消すとこの馬自身の走りはいわゆる「差し馬のそれ」を感じさせています。短距離馬にありがちな先行力と失速耐性で粘り切るといった走りしかできないというタイプではなさそうです。

 

今回最大の焦点は「レモンポップが1600mで勝ち切れるかどうか」でしょう。

20年 34.8‐24.5-37.1 1:36.4 [1:36.8] レモンポップ
13年 35.0‐25.1-37.8 1:37.7 [1:37.7] アジアエクスプレス
11年 34.6-25.1‐38.0 1:37.7 [1:37.8] オーブルチェフ

22年 34.9-24.5‐37.2 1:36.6 [1:38.0] コンティノアール
19年 33.9-25.2-37.1 1:36.2 [1:38.2] デュードヴァン
16年 35.6-24.6-37.5 1:37.7 [1:38.2] エピカリス

18年 35.3-24.5-38.3 1:38.1 [1:38.2] ガルヴィハーラ
15年 34.9-24.9-37.6 1:37.4 [1:38.3] ラニ
14年 35.6-25.8-36.6 1:37.1 [1:38.4] タイセイラビッシュ
13年 35.0-24.6-38.4 1:38.0 [1:38.4] ダイチトゥルース
18年 35.6-25.7-37.0 1:38.3 [1:38.4] メイクハッピー

これは近年の2歳・東京ダ1600mの馬場差補正後のタイム上位10傑。

ご覧のとおりレモンポップはぶっちぎりの時計を叩き出しています。2歳でこれだけのパフォーマンス発揮≒ある程度の早熟性や距離短縮指向のスピードがあることを示しています。レモンポップが5歳で初重賞制覇ということからも一介の米国血統早熟馬だった可能性は否定されています。つまりは距離短縮指向の高いスピードを示した一戦だったと解釈することができます。

バランスの良い先行力と末脚を存分に発揮でき、かつワンペース気味な末脚で押し切ることの可能なダ1400m≒根岸Sで高いレベルのパフォーマンスを示しました。距離短縮指向のスピードを持つ馬がフェブラリーSを優勝したケースは05年メイショウボーラーや16年モーニンが思い出されます。この時は不良馬場や重馬場といった時計の出やすい馬場。基本的に寒気と乾燥により馬場が重くなりやすいフェブラリーSは先行力を主体とする距離短縮指向の馬を狙うのはご法度となります。昨年のテイエムサウスダン激走も重馬場(超高速馬場)だったことが大きな要因です。2歳時から圧倒的なスピードを誇り、古馬となってからも1400m寄りの能力を発揮し続けているレモンポップは週末の馬場状態が勝ち切れるかどうかの大きなカギとなってくるでしょう。

さて、ここからは私の個人的な印象です。このレモンポップという馬、かつダート界を賑わせたベストウォーリアに似ていませんかね。ベストウォーリアは先行力と末脚のバランスの良さでダ14~1600を主戦場とし、南部杯2連覇やフェブラリーS隔年好走しました。1400mで快勝できるだけのスピードを持っているため、先行力が活きる南部杯では強さを発揮し、コースレイアウトが逆転するフェブラリーSでは詰めが甘くなるという特徴を持っていました。血統といい、戸崎騎手が育て上げてきた点といい、能力バランスといい、南部杯>フェブラリーという適性といい、レモンポップとベストウォーリアは非常に酷似した境遇に置かれているとは思わないでしょうか。当日の馬場状態と詰めの甘さに注意したいところです。

 

■ドライスタウト

先行力と末脚のバランスが良い馬。これまでで目立ったパフォーマンスを発揮したのはオキザリス賞。そのオキザリス賞を馬場差補正後のタイム順に並べると以下のとおりになります。

20年 35.0‐11.9-36.5 1:23.4 [1:24.2] ドライスタウト

14年 35.0‐12.5-37.6 1:25.0 [1:25.0] ブルドックボス

18年 35.6-12.5-36.3 1:24.4 [1:25.2] デルマルーブル

20年 34.8‐12.1-37.8 1:24.7 [1:25.3] バクシン

22年 34.9‐12.1-38.1 1:25.1 [1:25.4] ぺリエール

16年 34.4‐12.1-37.4 1:23.9 [1:25.5] シゲルコング

19年 35.9‐12.5-36.7 1:25.1 [1:25.6] メイショウテンスイ

15年 34.9-12.5‐37.5 1:24.9 [1:25.6] オーマイガイ

17年 35.8‐13.4-36.8 1:26.0 [1:26.2] ダークリパルサー

純粋な走破時計でも補正後の時計でもぶっちぎりで早いのはご覧のとおりです。次いで早かったのは2014年で勝馬はのちにJBCスプリントを優勝するブルドックボス。

12.1-11.0-11.9-11.9-12.0-12.0-12.5 21年オキザリス

やや時計の出やすい馬場に加えて加減速のないミドルラップを刻み続けていったレース。これを番手から末脚も使ってタイムを押し上げたドライスタウトには1400指向のスピードに秀でた能力があると判断できます。これを逃げたインコントラーレがその後短距離路線で、追走に苦労するも直線で末脚を発揮したヴァルツァーシャルが距離延長でそれぞれ活路を見出していることからも22年オキザリス賞の質感は感じ取れるのではないでしょうか。

アフリート・リアルシャダイNijinskyといった血が並ぶことから成長力に期待できそうなことはドライスタウトの未来を考えても明るい材料だと思いますが、フェブラリーS視点で距離短縮指向に秀でた能力を発揮していることは、詰めが甘くなる可能性を示しているはずで人気に見合った勝率は疑ってかかりたいところです。

 

■レッドルゼル

短距離指向の追走力と末脚を兼備した馬。川田騎手が手綱を取ってからは末脚を活かす形で追走力を末脚に転化。20年カペラS(中山ダ1200)を追い込み好走、根岸S優勝のパフォーマンスはまさに短距離指向を示すもの。距離延長では緩急の大きさが追走力の良さを相殺するため末脚不足につながります。21年フェブラリーS4着は立派ですが、例年よりも軽い砂質であること川田騎手のコース取り含め最高の騎乗があってのもの。前走JBCスプリントは盛岡の道悪でトラックバイアスがかなり偏った馬場。出遅れ&直線だけの競馬で4着は巻き返しを期待したいとことですが、距離延長適性がなく当日はパサパサの良馬場が想定されるため期待値はかなり低いと考えます。

 

■ショウナンナデシコ

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■結論

 

本命は、◎メイショウハリオ

 

37.5‐36.5-36.8 1:50.8 [10‐10‐09‐09] みやこS 1着

35.9-37.1‐37.2 1:50.2 [14‐14‐11‐08] マーチS 1着

62.5→11.4-12.0-13.0-12.0-12.4 2:03.3 帝王賞 1着

 

オープンクラスでの3勝をみると「高速馬場で脚を溜める競馬」となったみやこS・マーチS、「時計の早い決着」となった帝王賞という特徴がうかがえます。これはメイショウハリオが中距離では距離短縮指向のスピードの要求度が高い方が好走しやすい能力を持っていることを示します。

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また、帝王賞が良い例だったように勝ち切るためには「外的要因によるアシスト」が必要な馬でもあります。帝王賞はスワーヴアラミスが道中動いたシーンで手綱を抑えてスタミナを温存し、あのオメガパフュームやあのチュウワウィザードに勝利。一方で東京大賞典ではサンライズホープが動いたところで呼応するかのように動いてしまい末脚が鈍ってしまいました。騎手の胆力が試されている部分もありますね。

近年のフェブラリーSは超絶イン前有利馬場や超高速馬場が続いたために、先行力や距離短縮指向のスピードが大きな優位性を持ちました。金曜夜現在で当日の天気は春の暖かさ。週中も目立った降雨がなくパサパサの馬場状態。これは距離延長指向の能力が要求されることを示唆し、帝王賞をはじめ中距離重賞3勝のメイショウハリオにとって絶好の馬場状態となる可能性が高いです。逆にマイル視点で距離短縮指向のスピードに優位性を持つ馬は詰めの甘さが強調される可能性もあります。

 

今年のメンバーは全体的に短距離重賞で良績を挙げてきた先行馬が多い印象です。あまり色気のある先行勢がおらず、あくまで「自分の競馬をしてどこまで」というタイプが多数を占めます。そこに僅かでもレモンポップ・坂井瑠星騎手にはスムーズな競馬をさせてたまるかという気概が生まれれば、ただでさえ比重が前の隊列でさらに前へ負荷が掛かるとは思えないでしょうか。これが外的要因によるアシストとなります。

 

唯一の懸念は左回り。チャンピオンズCやJBCクラシックを見ても直線で明らかに内へ刺さります。仮説を立てるならば、「中距離でスタミナ消耗しているとササる」のではないでしょうか。今回はマイル戦。余力十分で直線を迎えられれば中距離の左回りでみせたような悪癖は出ないのではと希望的観測をします。そもそも今年のメンバーはすべて一長一短。今年のフェブラリーSは距離延長適性が要求され、かつ展開利で浮上する馬を狙うとし本命をメイショウハリオとすることにしました。レモンポップ・ショウナンナデシコが踏ん張るところをソリストサンダーが追い詰めるなか、外からメイショウハリオが待ってましたと飛んでくるシーンを絵図とします。

 

あとは運があることを祈るばかりです。