有馬記念2021~各馬評価~

www.youtube.com

 

▼クロノジェネシス

34.6-25.4-24.8-24.3-24.4 / 2:13.5 20年宝塚記念

43.3-38.2-24.6-24.4-24.5 / 2:35.0 20年有馬記念

35.1-24.9-24.7-23.0-23.2 / 2:10.9 21年宝塚記念

グランプリ定番ともいえるロングスパート勝負を制してグランプリ3連覇。ケチのつけようがありません。特筆すべきは超ロングスパートとなった20年有馬記念のパフォーマンス≒フィエールマン(小回り適性の薄さを先行策で相殺し自慢のスタミナを活かして最大限の走り)をきっちり差し切った走りは秀逸そのもの。モズベッロやサラキアが漁夫の利を得て浮上するような質感、ユニコーンライオンが粘り込む質感、そのどちらでも好走できる競馬の幅は信頼に値します。重箱の隅をつつこうにも海外帰り、枠順内外など微々たる要素しかありません。強い牝馬世代の1頭として有終の美を飾る確立は高いのでは。

 

▼エフフォーリア

総合力の高さありつつも、持続力優位の能力を活かした時に本領発揮。

36.3-35.4-24.0-24.9 / 2:00.6 21年皐月賞

35.0-37.7-24.5-22.9-22.4 / 2:22.5 21年日本ダービー

36.2-36.3-22.9-22.5 / 1:57.9 21年天皇賞(秋)

失速耐性を問われた皐月賞で前々から弾けて圧勝。中距離向きのキレが問われる展開の日本ダービーで僅かにキレ負け。緩い流れから高速ロングスパート勝負となった天皇賞(秋)ではコントレイル・グランアレグリアの強敵古馬に勝利する快挙。これまでのパフォーマンスを整理すると、中距離指向の先行力と持続力優位の末脚を活かした時に高いレベルの走りをしていることが分かります。なお、5勝すべてで「序盤が緩い展開からミドルスパート気味」といった共通点があります。このことから距離短縮指向≒マイル向きの先行力は未確認ですので、中距離でハイペース気味≒忙しい展開だと信頼性を確約できないという想像もできます。また、日本ダービーでキレ負けでもタイム差なしの2着・天皇賞(秋)でL3F:33.2秒を計時、というように申し分ないキレを兼備していることから総合力の高い末脚を示しています。総合力の高い末脚であることを大前提に、エピファネイア×ハーツクライ≒持続力優位の能力持ちだった父・母父や、欧州色優位の血統構成からもエフフォーリアの本質が形成されているのではないでしょうか。

クロノジェネシスは強敵ですが、すでに古馬トップレベルの牡馬で斤量55㎏・挑戦者という立場・胆力ある横山武史騎手・成長曲線の上昇など逆転する余地もあります。G1は「馬5:人5」といいますが、エフフォーリアと横山武史騎手が共同作業でどこまでの点数を叩き出すことができるのか。勝負の分かれ目はそこだと考えます。

 

▼タイトルホルダー

35.1-37.5-40.2-25.0-23.2-23.6 / 3:04.6 21年菊花賞

比較対象がないので評価が難しいですが、緩急の大きさとミドルスパート勝負は例年の京都菊花賞と同様の構図。タイトルホルダー自身が欧州色の強い血統かつ他上位馬も欧州血統が目立つタイプだったことからも阪神コースらしいタフさが求められたレースだった模様。

皐月賞2着・先行勢に辛い日本ダービー0.6差6着、菊花賞1着というようにタイトルホルダーは世代上位能力が認められます。ただし菊花賞勝利騎手インタビューでは「いつも力みやすいというか、真面目過ぎるところがありますが、一頭になればリラックスするというのも知っていたので、今回は無理してでもハナにこだわっていました」と、好走条件に『単騎逃げ』が挙げられます。

折り合えば持続力満点の能力を騎手の胆力ある判断が最大限引き出したかたち=百点満点の菊花賞から騎手が替わり、逃げ先行勢が揃った今回は再現性が低いことが想定されます。

 

▼ステラヴェローチェ

春の評価から変わらず本質は持続力優位の総合力高い末脚が武器。距離短縮指向が要求された朝日杯FSでの好走から距離延長の不安を抱いたままだった春でしたが、馬場適性の差が出たとはいえ神戸新聞杯のタフ馬場で2200mを走りぬいた点は父バゴが表面化しつつあると考えられます。クロノジェネシスがそうだったように、成長曲線を駆け上がるとともにバゴの特徴が前面に出ていると仮定できる秋2戦です。

 

菊花賞の敗戦理由はふたつ。ひとつは状態面。「正直今の状態を考えれば頑張ったと思います。稽古でもこれほど動けないのかという感じでしたが力がありますね。」とコメントにもあるように、中京の不良馬場で激走したダメージが大きかったようです。そこにきてSadler’s Wells持ちが浮上した阪神3000の菊花賞は予想以上に厳しい内情だった模様。そしてもうひとつは、仕掛けのタイミング。人気を背負った立場≒勝ちに行く姿勢が必要という精神状態から残り800mで仕掛けます。21年菊花賞の残り800m[11.7-11.5-11.4-12.2]を後方から追撃することは不可能に近い質感だと分かります。それでも立場上やらなければいけない。1着を狙ったがゆえに、3着もなかったという結果。惨敗しなかったのは持続力優位の末脚に加え、失速耐性の優秀さだと結論づけます。

クロノジェネシス同様、成長と共にバゴ色が強まるのであれば「マイルG1好走能力が中長距離ではマイナス」といった評価を覆すことができます。フレッシュさが必要ともされる有馬記念においてタフな秋2戦を経験したことや、前後内外の不利を覚悟する必要はありそうですが、適性はあると評価できます。

そもそも、この馬に関しては追いかけており皐月賞日本ダービーでも御礼申し上げるばかりなので評価どうあれ買わないわけにはいきません。

 

▼ディープボンド

失速耐性に秀でる長距離馬。500㎏超の馬体に成長&時計の掛かる馬場でパフォーマンスを上昇させている点から好走条件は狭いはず。先週雨の影響を受けても時計が掛かる気配がなかったように、今開催の中山芝は昨年比で早い時計の出る状態です。好走の芽が見出せません。

 

ペルシアンナイト

①距離延長適性

右回り2000m以上の戦績は【0.3.2.4】で、圏外だった4戦は19年大阪杯:乾燥途上の馬場、19年札幌記念:上位馬強力、20年有馬記念:良でも時計の掛かる馬場、21年大阪杯:重馬場。マイルチャンピオンシップ優勝や連続好走の実績はありますが、マイラーと見限ってしまっては皐月賞大阪杯札幌記念などでの好走に説明がつきません。またマイラーだとしたら東京1600であまりにも走らなさ過ぎている点にも矛盾が生まれます。東京やシャティンのようなキレが要求された場合や、長い直線での末脚勝負となった場合にパフォーマンスを落としている一方で、2000m以上では良馬場&短い直線で意外にも安定した成績を納めています。

 

②血統

ハービンジャー×母(全兄ゴールドアリュール)で、ダート実績が目立つ母系の能力をハービンジャーが芝向きに引き上げたような戦績。全体的には欧州色と米国色がひしめき合うなかにサンデーサイレンスが挟まっている血統構成。このどちらにも寄り切らない血統構成が、好走ゾーンの狭さを生み出している印象。京都1600や良馬場&短い直線でしか好走できないこととの裏付けでは。

 

クリスチャン・デムーロ

ここまでC・デムーロ騎手は日本GⅠ成績【3.1.2.29】と人気に応えきれていない印象です。ただし、3勝は13年桜花賞アユサン・17年ホープフルS:タイムフライヤー・18年ダノンファンタジー。この3勝の共通点は後方待機。マイル指向のスピードもあるペルシアンナイトにとって中山2500mがドンと来いの距離でないことは間違いありません。そこで選択する戦法はひとつ。C・デムーロ騎手の成功体験ともあいまって、道中動かず終いに賭けてくるはずです。

 

④20年有馬記念

昨年の5回中山開催は開幕週から道悪で使われた影響か、時計が掛かる馬場状態で推移していました。有馬記念当日には平均から1秒程度かかる馬場状態となっていました。そこに加えて序盤はゆったりした流れ。ペルシアンナイトにとっては追走力の利も活かせず、馬場も中距離では不向きな時計の掛かる状態と厳しい条件が重なっていました。結果はそれでも上がり2位の7着と可能性を感じさせる敗戦でした。今年はここまで平均よりも1秒程度早い時計の出る馬場。つまり昨年有馬記念よりは2秒程早い時計の出る馬場で推移しています。そしてパンサラッサを筆頭にそれをつつくような先行勢も揃ったことから序盤の追走力も活かせそうな状況。

 

①②③④からペルシアンナイトは狙えます。あとは内枠さえ引けば激走条件は揃ったともいえます。牝馬や3歳馬に注目が集まりますが古馬の意地を魅せて欲しいところです。

 

▼シャドウディーヴァ

ここで狙いが立つ理由は「距離短縮指向のスピードと持続力優位の末脚」が今年の有馬記念では武器になるかもしれません。

ここまで府中牝馬S&東京新聞杯で複数回好走しているように直線の長いコースへ適性があることは間違いありません。血統はIndian RidgeにDansiliときてハーツクライというように欧州型の種牡馬&実績距離を徐々に伸ばしたような配合=欧州マイル指向の母系にハーツクライを迎えて距離適性に融通を持たせた血統構成。急加速力は鈍いものの、持続力に優位性があることは血統からも実績からも把握できます。ゆえに、牝馬限定戦は緩急の大きい展開からキレ味勝負となるため、急加速力不足を特に露呈しやすいシャドウディーヴァは成績が安定しません。この点が混合戦では逆転し持続力を活かしやすい勝負となり浮上している要因でもあります。

 

フラワーC:先行決着を4角9番手から差し込んで4着

秋華賞:4角詰まり急加速力不足に拍車かかるも4着

常総S:持続寄りの後傾ラップを離れた4番手から勝ち切り1着

クイーンS:ラチ沿いで溜めた3頭で決まるレースを外追走から大外捲って4着

エリザベス女王杯(20年):最内枠が仇。仕掛け所で動けず&直線前壁で8着

中山牝馬S:出負けして最後方から不良馬場を追い込み0.3差5着

マーメイドS:1着51㎏,2着51㎏のなかキレ不足に拍車が掛かる55㎏で3着

 

さて、上記は小回り&周回コースでの特記事項を示したものです。右にモタれる癖を持ちながら直線は捌いて末脚を伸ばしてこなければならないため、少しの不利が大きく影響し詰めの甘さにつながっているようです。強敵&個性がひしめく有馬記念で不利もなくクリーンな競馬ができる確証など微塵もありませんが、「人気薄には甘い評価」を前提とするのが常ですから可能性を探っていきます。

有馬記念前週時点で芝はおそらく約2秒ほど早い時計が出る馬場状態です。この馬場で先行勢が引っ張る展開ではマイル重賞を好走できるスピードが優位性を持ちます。追走力で優位に立てば終盤での余力が他馬よりもあるため、末脚の威力を存分に発揮できます。後方待機から一発を狙う馬は複数いますが、距離短縮指向のスピードの有無は取捨選択の材料となります。また、混合戦では牝馬斤量がキレ不足を補完する材料&持続力優位の末脚といった武器を活かすかたちになるはずなので激走があってもおかしくありません。あの横山典弘騎手ですから完全ノーマークは怖い存在です。

 

▼ウインキートス

①メンバー随一の中山実績

中山成績は【2.5.1.2】と強敵揃いのメンバーでも最上位の中山適性を誇ります。圏外だった2戦はデイジー賞と日経賞。デイジー賞は緩い流れからL3F:12.0-11.5-11.8の勝負となたレース。当時の津村騎手がレース後談で「もっと強気に乗っていれば」とコメントしていたように、勝負所で狭いところに突っ込み動けずキレ負けしていました。日経賞パトロール映像を見れば敗戦理由は明らかで松山騎手は9日間騎乗停止の処分を受けていました。

 

ゴールドシップ×イクスキューズ

ゴールドシップは言わずと知れた怪物的スタミナで持続力の鬼でした。一方、母イクスキューズは1600~1800m重賞で好走を重ねた馬。母方のスピード≒米国型の追走力をベースにゴールドシップの持続力を乗せた戦績がウインキートス。ゴリゴリの持続力勝負というよりはもう少し軽い質感の持続力勝負≒高速ミドルスパートが最も能力を発揮するようです。

 

内目の偶数枠。かつての枠順抽選会でジェンティルドンナ陣営が真っ先に2枠4番を選択したように、この枠順はウインキートス陣営にとって願ってもないものとなりました。昨年比で早い時計が見込まれる中山芝≒高速スパートかつ追走力が活きる状況です。有馬記念初騎乗の丹内騎手に不安がないわけではありませんが、キャリアハイの37勝を挙げGⅡ制覇も果たし、勝手知ったるウインキートスとのコンビならば期待値の方が高いのではないでしょうか。昨年との馬場が真逆であることから、今年は前々の牝馬が穴を開ける推測もできます。