■傾向
・先行馬有利
・人気薄での激走も先行策が多い
・差し馬は芝指向の末脚(≒マイル重賞で判断可)が必要
・外枠不振傾向(特に8枠は壊滅的)
・4角外回すとかなり厳しい(道悪時は尚更)
・血統:SS系から芝指向のスピード・米国系から先行力を受け継いでいるとよい
・SS非内包馬は1700m以下の実績でスピード能力の判断可能
・G1馬の激走に注意必要≒技術の進歩により加齢による能力減退ゆるやか
■レモンポップ
こちらの南部杯回顧でも触れたように、レモンポップの武器は3つ。先行力・スピード維持力・失速耐性です。ただし、最後に言及しているように狙うべきレースはBCダートマイルだったと考えています。
南部杯は例年、距離短縮指向の適性が問われるレースです。そこでの圧勝はすなわちマイル視点から距離短縮指向の能力に秀でていることを証明しており、ここから距離延長適性を示す要素は見当たりません。これまでの戦績や米国色の濃い血統からもワンペース気味にスピードを発揮することがレモンポップにとって最も高いパフォーマンスへとつながっていきます。
チャンピオンズCでは1600→1800、ワンターン→周回コース、さらにはコース起伏からも、これまでより緩急の大きいレースとなることが見込まれます。これはレモンポップが得意とするマイル指向のワンペース気味なスピードを発揮しづらい条件替わりということを意味します。
過去、血統にSSを内包せず好走したのは、ホッコータルマエ・アスカノロマン・テイエムジンソク・インティの4頭。4頭とも1700m以下の重賞実績と1800m以上の重賞実績を併せ持っていました。レモンポップは1800m以上の重賞実績が不足しており、それに近いかたちで鍛えられたレース経験もありません。
緩急のついた武蔵野Sでは芝指向のスピードに秀でるギルデッドミラーに屈していることから、仮に距離は持ったとしてもSS系のスピードを受け継いでいる馬相手に劣勢となりそうです。
■セラフィックコール
大型馬・エンジンの掛かり遅い・トップスピード抜群。
これらの特徴はマリオカートのクッパを彷彿とさせます。マリオカート経験者であれば分かると思いますが、クッパは玄人向けのキャラで、操作性や急加速力と引き換えにレーシングゲームでは最大の武器となるトップスピードを手に入れています。チャンピオンズCで外々を回すことは御法度的騎乗ですが、これまでセラフィックコールは急加速力を補うために3角付近から外々を回してエンジンを掛けながら直線に向かうシーンが目立ちます。
また、中京ダートコースは下り勾配の3~4角を回る器用さも求められます。内々を立ち回った経験の少ない大型馬というだけでも不安材料ですが、仮に内々を立ち回れたとしても、仕掛けどころが急坂となれば急加速力不足の影響が大きくなりそうです。
3歳馬ながら無敗で古馬混合重賞を優勝は素晴らしいことですが、これまでのパフォーマンスが発揮できないシーンが想定されます。
■アイコンテーラー
先行力に優れる平坦巧者の中距離馬。芝ダ全5勝が新潟・大井。近2走がシリウスS(阪神2000)と砂を入れ替えタフ化したJBCLクラシック(大井1800)で、平坦巧者ながらタフな質感に対応しつつある可能性を示唆。ただし、平均的な馬格の牝馬であることから本質的なパワーアップは見込みづらい。むしろ近走よりも追走力の要求度が上がった急坂コースでの走りはスパート余力の減少が心配になります。この状況で人気するようならば期待値は低いのでは。
■グロリアムンディ
スタミナを基盤として先行力と失速耐性を武器に立ち回る。昨年のチャンピオンズCはスタートミスと芝指向の末脚が活きる質感の軽いレースとなったことで、先行力とスタミナともに活かす場面がなく終戦。
血統にSSの血を持たず好走した4頭(ホッコータルマエ・アスカノロマン・テイエムジンソク・インティ)は1700m以下の重賞で好走しているように、実績でスピード能力を説明できていました。グロリアムンディは香取特別(中山2400)で持ったまま4角を回ってきたり、アンタレスS(阪神1800)では前後不利の展開を唯一踏ん張るなど、スタミナ指向の能力がうかがえます。スピード能力は2~3歳時の芝オープンでの実績に求めるしかなさそうで、過去の好走馬とはややズレています。
大久保厩舎は持続力・失速耐性を育成しやすい傾向があり、「急坂+1800」では阪神・中山よりも質感が軽くなりやすい中京だとスタミナを持て余しやすいことや芝指向のスピードを持つ馬に屈しやすい状況となりそうです。
■ハギノアレグリアス
欧州指向の末脚を備える中長距離馬。Sea-Bird・クリスタルパレス・ジェネラス・キズナと重ねた血統で欧州色優位。米国色の薄まりが追走力の薄さに直結しています。中距離でもスタミナの要求度が高いレースで持続力優位の末脚を活かすかたちがベスト。それを裏付けるように23年帝王賞は2000mでも時計の早い決着となり凡走(やや強引な仕掛けもあり)。米国的追走力と芝指向のスピードが活きやすいチャンピオンズCよりも、砂入れ替えによりタフ化したであろう東京大賞典の方がパフォーマンスを発揮しやすいはずです。
それでも、応援してきた馬なのでなんとか頑張ってほしいものですが・・・
■テーオーケインズ
21年チャンピオンズCの走りから適性云々を語る必要はありません。かつてのコパノリッキー・インティ・ゴールドドリーム・チュウワウィザードというようにG1馬はやはり「腐っても鯛」。近年の技術向上に伴い加齢による能力の減退もゆるやかになっており、たとえピークアウトしていたとしても打点の高さの違いにより他馬が上回れないという状況が生まれます。21年のパフォーマンスが120点だとすれば、そこから80%の能力しか保っていないとしても96点を叩き出せるという具合。調教、枠順などからどの程度のパフォーマンスを発揮できるか一考してみます。
■クラウンプライド
12.7-11.2-13.1-12.8-12.6-12.6-12.7-11.9-12.3 1:51.9 22年チャンピオンズC
昨年2着のチャンピオンズCは暫定3F比較でみると【37.0→38.1→38.0→36.9】という数値になります。緩急の大きい後傾ラップを描くことで、前内が非常に有利かつ芝指向のスピードが優位性を持つという状況でした。芝1600~1800で上がり上位を連発していたジュンライトボルトが視覚的に桁違いの瞬発力を魅せたことにも合点がいきます。
クラウンプライドはトニービン・ホワイトマズル・アグネスタキオン・キングカメハメハ・リーチザクラウンと日本芝指向の血統を重ねています。ただし、全体的には米国色を強めています。
サウジカップはパンサラッサがハイペース(4F通過:45.85秒)に引き込み、クラウンプライドは強気先行も末脚伸ばせずジリジリで5着。ドバイワールドCでは前後半59.30→63.95という前掛かりな展開で道中脚を溜める競馬でも目立つほど末脚伸ばせず5着。
このような戦績からも判断されるように安定した先行力とやや末脚不足という能力バランスから後者の血統の影響を強く受けているようです。
しかし悲観する必要はなく、海外の厳しいレースで鍛えられてきたことは貴重な経験値でもあります。23年帝王賞で高速決着が得意なテーオーケインズに競り勝ったことは見事な成長だと感じます。チャンピオンズCは先行力や立ち回りの巧さが優位性を持ち、リピーター発生率が高いこと、中京1800でリーチザクラウン産駒の好走率が高いことなどからも安定した走りを魅せることが可能では。
■メイショウハリオ
2:06.5 36.0-38.0-25.8-25.3 5着 23年JBCクラシック
2:01.9 35.1-37.5-25.4-23.9 1着 23年帝王賞
2:05.8 37.3-38.1-24.4-25.2 3着 22年東京大賞典
2:03.3 36.7-37.7-25.0-24.4 1着 22年帝王賞
メイショウハリオの大井2000mでの成績は上記のとおり。端的に時計の早い決着と時計の遅い決着ではパフォーマンスの優劣が発生していることがうかがえます。今年のJBCクラシックは砂を入れ替え後に行われており、タフな質感の馬場は芝指向のスピードを主体に戦うメイショウハリオにとっては好走域からズレる条件でした。さらに前走は最後の直線で伸びないインを選択したことも終いの伸びに影響を与えたと考えられます。
また、メイショウハリオは芝指向のスピードと失速耐性を末脚に叩き込むタイプなので、どうしても外的要因の助けが必要です。それを裏付けるようにG1・3勝は前掛かりや早仕掛けというように先行馬たちが非効率的な走りをさせられるシーンがみられます。前走は1角3番手以内の馬がそのまま1,2,3着となるレースでした。
このように、前走JBCクラシックは馬場・前後・内外すべてがメイショウハリオに逆風を吹かせていたための凡走だったことが分かります。
中京1800mは阪神1800・中山1800に比べて芝指向のスピードが活かしやすいコースです。また、天気予報から良馬場の開催濃厚ということから、道悪時よりも前後の差が生まれにくい状況となりそうです。前走の大井からコースが替わることはもちろん、頭数増・先行馬増から条件好転は間違いなさそうです。また、競馬界のクッパと評価したセラフィックコールが自身のトップスピードを最大限生かすために外々を進出していくようであれば、終盤へむけた圧力が馬群全体に圧し掛かります。これはメイショウハリオのG1勝利必要条件でもある「外的要因」となりえます。
とはいえ外々を回して末脚を伸ばすかたちは、かなり恵まれないと上位進出は叶いません。そのデモンストレーションとして伸びないインを選択したという前走があるのだとしたら、ここは浜中騎手の伏線回収に期待するのも手ではないでしょうか。フェブラリーS好走からも差し馬にとって必要な芝指向のスピードは十分に兼ね備えていることが再確認できています。ダート重賞において末脚優位馬を買うのはある程度の覚悟が必要ですが、複数の条件好転かつ自身の好走条件が揃うであろう今回は、その覚悟を持って評価すべき1頭であると考えます。
■結論
本命は、◎メイショウハリオ
狙うはサウンドトゥルー以来の6歳馬勝利。脚質的にはやや博打要素ありでも、その覚悟を持って本命を打てるだけの論拠ありとみます。上位は23年帝王賞の1~3着馬を想定。テーオーケインズは全盛期の75%の能力と想定。引退が決まり渾身の仕上げから下駄を履かせてプラスアルファがあるのではということで、対抗。お手馬多数の川田騎手が選んだクラウンプライド。「祐一さん、僕『は』勝ちましたよ」というシーンもありか。チャンピオンズCとしてはややタフな質感に寄るとみてグロリアムンディ・ハギノアレグリアスを連下の評価。