【日本ダービー結論編】

・ソールオリエンス

23.2-23.5-24.2-25.2-24.5 / 2:00.6 皐月賞

非凡な実力に展開が加わったことでその「鮮やかさ」はより鮮明となりましたが、展開だけでここまで浮上し勝ち切ることはできません。京成杯は低レベルでしたし、ソールオリエンス自体も立ち回りの幼さなど完成度という点ではまだまだでした。だからこそ魅せたゴール直前の末脚が非凡そのものでした。スタミナ・スピードともに問題なく末脚の総合力も高いといった能力はおおむね人気に見合った走りをしてくるでしょう。

2016 [14‐14‐12ー10] ディーマジェスティ

2012 [18‐18‐17‐06] ゴールドシップ

2005 [15‐16‐09‐09] ディープインパクト

2000 [15‐15‐15ー08] エアシャカール

1998 [14-14-11-08] テイエムオペラオー

1993 [18‐17‐15ー12] ナリタタイシン

上記は追い込み優勝の皐月賞馬。ダービーでの成績は[1.1.3.1]です。展開が向いても追い込みで皐月賞を勝つのは難しいレースですので、総合力の疑いようがないことはこの成績からも立証されているようです。

ソールオリエンスの母系は欧州色が濃い血統で、凱旋門賞馬(Sadler's Wells・MontjeuRainbow Quest)を複数内包しています。ここにキタサンブラックを迎えたことでダービーでは高いレベルでの急加速力不足が懸念材料となりそうです。ディープインパクト産駒が日本ダービー不在は13年ぶり≒サンデーの代重ねが進んだことから血統の転換期を迎えている日本競馬界では、全体的にキレの鈍化が見られそうなので杞憂に終わる可能性はありますが、東京2400mでペースの落ち着きかつ緩急の大きさは今回の皐月賞と真逆の質感となります。つまりは、皐月賞とは真逆の質感でパフォーマンスを上げてくるであろう馬がいる場合、ライバルはその馬となります。

皐月賞回顧でも触れたようにやはり横山武史騎手はエフフォーリアで挑んだダービーが強く悔やんでいるようです(記事)。一気にアクセルを踏んだがゆえに最後の最後で末脚が鈍ったところをディープインパクト産駒のシャフリヤールに狙われて悔しすぎる惜敗となったのが2021年日本ダービー。その経験を活かすようであれば、ソールオリエンスのダービー制覇も見えてきます。最後はすべて騎手力に委ねられたと思います。

 

・タスティエーラ

スタミナを主体とした持続力優位の中距離馬。共同通信杯でキレ負け、緩い流れからロングスパート勝負となった弥生賞では4角から追い通しでも最後まで伸びてくる競馬。さらに、皐月賞は前半59.6秒で折り返したにも関わらず後半でも61.2秒で駆け抜けるといった「失速耐性と末脚の持続力」の優秀さを魅せています。皐月賞は前半58.5~59.3秒で逃げ先行したグラニット・タッチウッド・ベラジオオペラが後半は63.1~64.4秒と失速していることを考えるとタスティエーラの優秀さが実感できるのではないでしょうか。

このことからタスティエーラは「消耗戦に強い自力勝負型」というキャラを確定させることができます。皐月賞当時は皐月賞回顧で触れているように相当時計の掛かる馬場でした。それにハイペースが加わり、先行勢には失速耐性やスタミナが大きく問われた一戦でした。サトノクラウン×マンハッタンカフェという血統構成からも適性は抜群だったようです。転じて、日本ダービーでは直線での急加速力やトップスピードが問われることから違ったベクトルの適性が要求されます。共同通信杯でキレ負けした事実や血統的にキレの成長が見込み薄であること、日本ダービーが消耗戦得意の自力勝負型に不向きなレースであることなどから前走同様のパフォーマンスを発揮することは疑ってかかりたいです。

 

・ファントムシーフ

35.3-25.2-23.7-22.8 1:47.0 共同通信杯

23.5-25.3-25.2-23.8-22.4 2:00.2 野路菊S

欧州色の強い血統かつ日本的主流血統を持ちません。それにもかかわらず新馬戦では阪神1600で末脚がキレ、つづく野路菊Sでも上がり特化型の着差がつきにくいレースを抜け出しました(キックバックを受ける教育的競馬のオマケつき)。共同通信杯は無理せず前目につけつつ末脚を引き出したルメール騎手の好騎乗が光りました。序盤早く、中盤緩く、終盤はミドルスパート気味で、全体としては緩急の大きいかつ末脚のトップスピードの要求度が大きいレースでした。父ハービンジャー×母父Medagriad'OroでDansili同血2×2のクロス持ち。さらにはNorthernDancer5×5×5×5という血統。コテコテになりそうな質感ですが、ここまでの走りからトップスピードは問題ない水準にあります。さすがに急加速力では日本主流血統を主張する馬たちには劣りますので、緩急の少ない競馬や斤量やコース形態の負荷が大きい状況で武器となる持続力を主体とした総合力の高さを活かしたいところです。

皐月賞ルメール騎手が秀逸な時計感覚をもとに100点満点の騎乗で3着でした。混戦の皐月賞であったこと、ジョッキーカメラからソールオリエンスをマークしている素振りが感じられないことなどから、ファントムシーフのこの位置取りはルメール騎手が自分で選択したものということになります。そこで刻んだタイムは前後半60.2→60.9秒。出来得るかぎりイーブンラップで効率の良い走りを心掛けていたことがうかがえます。終盤の脚力が強烈な馬、強烈な失速耐性を持つ馬が前にいただけで、この3着は満点騎乗のもとで生み出された結果だということになります。

ファントムシーフ自身は日本ダービーに向けて、急加速力不足が喫緊の課題となりそうです。成長による補完は血統的に望みが薄く、騎手によるポジショニングや追い出しのタイミングなどでキレに秀でる馬を相手にどこまで対抗できるかが結果に直結してきそうです。

武豊騎手の手替わりはこれまた秀逸な時計感覚の持ち主≒エネルギー効率の良い走りをさせる騎手ですからなんの問題もありません。実力上位ではありますが、日本ダービー向きの末脚キレ不足や満点騎乗で3着までだった皐月賞からさらに上積みを出せるかは疑問です。

 

・スキルヴィング

35.4-37.7-24.3-23.1-23.4 2:23.9 青葉賞

持続力優位な末脚の総合力が高い中長距離馬。ややロングスパート勝負となった青葉賞では安全策から末脚を伸ばして突き抜ける。4戦連続524kgの大型馬で、トップスピードまでは時間を要するもその持続性に非凡なところがありそうです。ゴールに向かってピーキーさせるような末脚の使い方を得意とするルメール騎手には非常に手が合います。

ここでの懸念材料はスピード不足。ここでいうスピード不足はレース全体に対する対応力と変換しておきましょう。「日本活躍馬を多数送り出している牝系・SSクロス持ち・母父シンボリクリスエス・父はSS孫種牡馬・全体的には欧州色優位」という血統構成は厩舎先輩で青葉賞馬のオーソリティと酷似しています。ダート馬も出る牝系で牝馬であれば男勝りな末脚が中距離近辺で効きますが、牡馬では芝で重厚な末脚が中長距離で威力を発揮します。レースぶりから距離短縮指向の適性が確認できればそれら傾向を否定できますが、スキルヴィングはその点において未確認。さらなる時計短縮の要求や大型馬らしいパワフルな末脚から詰めが甘くなることを想定しておきたいです。

 

 

■結論

 

本命は、ベラジオオペラ

 

軽快なスピードと末脚のバランスが良く、レースセンスに優れる中距離馬です。

アイドリームドアドリーム一族のエア冠馬には活躍馬が多数。3代母エアデジャヴー牝馬三冠ですべて善戦。その仔やエアシェイディエアメサイア、近親エアシャカールエアソミュールらは中距離戦線で活躍しました。スタミナ指向の一族に、ハービンジャーを重ねてロードカナロアでそれらを引き出しているといった具合が血統全体の印象となります。

35.4-24.0-24.7-24.8 1:48.9 スプリングS

35.9-25.4-24.1-22.6 1:48.0 セントポーリア賞

36.9-25.1-24.0-22.0 1:48.0 新馬

デビュー戦、セントポーリア賞と前半が緩く上がり特化型のレースを2連勝。つづくスプリングSは戦前から追走力の忙しさによりパフォーマンスが伸び悩むのではという懸念を払拭。序盤が早く→中盤も引き締まり終いバテというレースラップ。序盤はダッシュを効かせポジションを取り、中団追走でもこれまでよりだいぶ追走力を引き上げながら、終盤では上がり最速で突き抜けました。「ハイペース追走」「余力減少での末脚発揮」という2点は評価に値するものです。

皐月賞では前後半59.3→63.1秒という走り。主たる敗因としてはオーバーペースにつきますが、軽快なスピードと末脚のバランスを武器とするベラジオオペラにとって道悪馬場での消耗戦は適性外のレースだったともいえます。また重馬場のスプリングSを好走→中3週で再輸送というローテーションも過密日程でした。ソールオリエンスの逆手前コーナリングが話題にあがりますが、ベラジオオペラも4角手前で逆手前となり逸走しかけています。トビの大きな馬です。中山→東京替わりはフットワーク的にも向きますし、道悪の皐月賞→良馬場の日本ダービーは自身の武器を活かしやすい舞台となります。

レースの中心はソールオリエンスやスキルヴィングといった末脚優位馬です。焦点が後ろならば盲点は前。日本ダービー激走考察編で触れたように従来であれば激走候補に挙がりそうな、ドゥラエレーデやパクスオトマニカ、ホウオウビスケッツやトップナイフらは枠順や上がり最速勝利などひと押しとなる材料が足りません。ならばもう一列後ろから激走候補を探します。「上がり最速勝利&オープンクラスの急坂コース勝利&最内枠」のコンボを決めたベラジオオペラを今年の激走候補に推します。

良馬場の日本ダービーで軽快なスピードと末脚のバランスに優れた能力を存分に発揮し、最内枠からレースセンスの良さをもって立ち回ってくれば一発魅せることは可能と判断しました。

 

――――今年もよい日本ダービーを。

【日本ダービー激走考察編】

22年  7人気 3着 [02ー02] アスクビクターモア

21年  9人気 3着 [13-12] ステラヴェローチェ

20年 10人気 3着 [07-07] ヴェルトライゼンデ

19年 12人気 1着 [02-02] ロジャーバローズ

18年 16人気 3着 [02-02] コズミックフォース

14年 12人気 3着 [07-06] マイネルフロスト

13年  8人気 3着 [02-01] アポロソニック

12年  7人気 3着 [02-02] トーセンホマレボシ

11年 10人気 2着 [15-15] ウインバリアシオン

11年  8人気 3着 [05-05] ベルシャザール

10年  7人気 1着 [09-11] エイシンフラッシュ

09年  8人気 3着 [05-05] アントニオバローズ

08年 12人気 2着 [03-03] スマイルジャック

08年  6人気 3着 [12-13] ブラックシェル

07年 14人気 2着 [01-01] アサクサキングス

06年  7人気 3着 [13-12] ドリームパスポート

05年  7人気 3着 [14-10] シックスセンス

03年  7人気 3着 [04-02] ザッツザプレンティ

02年  6人気 3着 [06-04] マチカネアカツキ

01年 11人気 3着 [05-03] ダンシングカラー

 

上記は人気薄で日本ダービーを好走した馬を。[ ]内は3角→4角の通過順位。21世紀の日本ダービーで人気薄激走馬は20頭存在。うち14頭が4角7番手以内≒逃げ・先行策からの激走を叶えていました。まずは日本ダービーを先行策から激走した馬にフォーカスしていきます。

 

22年3着 34.5秒 100%  アスクビクターモア(7人気)

20年3着 35.2秒  80% ヴェルトライゼンデ(10人気)

19年1着 35.6秒 100% ロジャーバローズ(12人気)

18年3着 34.4秒  40% コズミックフォース(16人気)

14年3着 34.6秒  71% マイネルフロスト(12人気)

13年3着 34.9秒  67% アポロソニック(8人気)

12年3着 34.9秒  67% トーセンホマレボシ(7人気)

11年3着 34.9秒 100% ベルシャザール(8人気)

09年3着 35.5秒 100% アントニオバローズ(8人気)

08年2着 35.0秒  88% スマイルジャック(12人気)

07年2着 35.2秒  83% アサクサキングス(14人気)

03年3着 35.4秒  80% ザッツザプレンティ(7人気)

02年3着 35.9秒 100% マチカネアカツキ(6人気)

01年3着 35.3秒  86% ダンシングカラー(11人気)

 

上記は人気薄粘走激走馬14頭の日本ダービー戦前の上がり3F平均値と先行率を記したものです。上がり3F平均値は重&不良馬場・ダート戦を除いて算出した数値。先行率は4角5番手以内だったレース割合の数値。

例えばスローペースで先行好走した経験が多い場合、先行率は高いものの上がり3F平均は34秒前後となり、日本ダービーで粘走するには質感が軽すぎて根拠が薄いと判断できます。上がり3F平均値と先行率を並べることで、GⅠの舞台で粘り込める持続力とそれを最大限に活かせるポジショニングが可能かどうかを見極めようと思うわけです。

粘走激走馬で異質なのはコズミックフォース。先行率が低く、上がり3F平均も34.4秒と14頭中最速≒軽い質感。さすがは16番人気といった具合に感じられ、これをサンプルとして扱うと歪みが生まれそうです。

 

そのコズミックフォースを除いた粘走激走馬の平均値は『上がり3F:35.1秒 先行率:86%』となります。これに加えて、13頭中10頭が上がり最速で勝利、13頭中11頭が急坂コース連対実績がありました。上がり最速勝利・急坂コース連対の条件ふたつを満たしていたのが9頭。逆にふたつとも満たさずに激走を叶えたのはアサクサキングスのみ。このアサクサキングスは馬番16番から激走。粘走激走馬サンプル13頭の馬番は過去から順に⑥⑧⑱⑯⑦⑩⑦⑭③③①⑥③で、真ん中から内寄りの馬番が多くを占めています。64年ぶりの歴史的瞬間となったウオッカの勝利によって陰に隠れるかたちとなりましたが、ふたつの条件を満たすこともなく、枠順の恩恵もなく激走したアサクサキングスの走りはマニアックではありますが、なかなかお目にかかれるものではなかったと評価できます。

 

・上がり3F:35.1秒

・先行率:86%

上がり最速勝利あり

急坂コース連対あり(オープンクラスなら尚良い)

中~内枠

 

今年の日本ダービーで先行率60%以上を保持するのは以下のメンバー(数値上位順)。

 

100% 35.0秒 ドゥラエレーデ

100% 35.3秒 パクスオトマニカ

 75% 35.3秒 メタルスピード

 67% 34.9秒 グリューネグリーン

100% 34.8秒 ホウオウビスケッツ

 67% 35.4秒 トップナイフ

 80% 34.3秒 サトノグランツ

100% 34.2秒 ショウナンバシット

 80% 34.2秒 フリームファクシ

 80% 34.1秒 シーズンリッチ

100% 34.0秒 タスティエーラ

 60% 34.0秒 ファントムシーフ

 67% 33.9秒 ソールオリエンス

 75% 33.8秒 ベラジオオペラ

 

 

上位人気が想定されるソールオリエンスファントムシーフ、タスティエーラ、サトノグランツは激走候補から除外。残ったすべての該当馬は急坂コースでの連対歴がありました。上がり最速勝利経験があるのは、ベラジオオペラショウナンバシットフリームファクシメタルスピードパクスオトマニカ。なかでもオープンクラスの急坂コースで連対歴があるのはベラジオオペラ・ショウナンバシット・フリームファクシ。

【皐月賞2023 回顧】

■回顧

まずは馬場状態を確認しておきます。今回は降雨と排水力の戦いがあり、これを時系列でみていくことで馬場状態を把握していきます。まず、中山8R・野島崎特別はそれまでの馬場状態とクラス水準から2:01.3程度の決着を見込みました。

 

23.3‐23.8‐24.4‐25.1‐24.0 2:00.6 野島崎特別

結果は想定を悠々上回るかたちとなり、路盤改修後の排水力を見せつけられました。いわゆる「重馬場」から想定されるタイムではなく、JRA発表の概念で考えてはいけない馬場となっていました。中山8Rまでは。その後、ふたたび降雨に見舞われた中山競馬場。そして迎えた中山10R・春雷S。

33.6 ‐ 35.2 1:08.8 春雷S(OP)

33.5 ‐ 34.6 1:08.1 船橋S(3C)

前週行われた3勝クラスの船橋Sと比較します。春雷Sは前半で0.1秒余力を持って折り返していながら、後半は0.6秒突き放される内容。完全に劣っていますが、これは馬場状態の悪化が招いたもので間違いありません。中山8Rでは良馬場でのクラス水準に近いタイムを出せる馬場状態にありながら、約1時間後の中山10Rでは排水力が間に合っていないことがうかがえます。ここで肝となるのが1200mでこのタイム差ということ。短距離戦ですらクラスを超越して逆転するほど馬場の影響があったということ。となると、2000mとなる皐月賞でタイム低下に関してどれほどの馬場の影響があったかは説明不要でしょう。

 

▼皐月賞/結果 レース後談

23.2-23.5-24.2-25.2-24.5 / 2:00.6

ソールオリエンスの末脚炸裂が象徴的だった皐月賞。前半58.5秒というペースを生み出したのはグラニットとそれを結果的につつくかたちとなったタッチウッドの存在。タッチウッドは先頭を走りたがる気配があり、先頭にさえ立てばゆっくりと走るのは共同通信杯で確認済みです。しかしグラニットの先行力には敵わず、さらに後ろから馬が来ると反応する&騎手が交わさせない意思も持っていました。この2頭の特性と関係性がペースアップを助長させました。

勝ち時計は2:00.6。これはエフフォーリアの勝った2021年皐月賞と同タイム。ここに先述の馬場状態(短距離戦でクラスを超越してタイム逆転する状況)を加味して考えると、ソールオリエンスの叩き出した時計は優秀なものだったと考えられます。ちなみに近年で最も時計が掛かる馬場だったのはコントレイルの勝った2020年でタイムは2:00.7でした。

 

―――ソールオリエンスはホンモノか?

結論から言うと、ホンモノです。非凡な実力に展開が加わったことでその「鮮やかさ」はより鮮明となりましたが、展開だけでここまで浮上し勝ち切ることはできません。予想当初、第一印象でソールオリエンスは軽視していました。京成杯の低レベルさ、コーナー立ち上がりでの不器用さなどからまだ完成度が低いのではと。しかし、さらに分析していくとその印象と実態に乖離があることに気づいていきました。レース自体は低レベルでも終盤特化型のレースを、その終盤でミスしておきながら最後の200mだけでひっくり返してしまうだけの脚力。これは認めなければならない能力なのではと思うようになり、改心し評価を記述しました。

2016 [14‐14‐12ー10] ディーマジェスティ

2012 [18‐18‐17‐06] ゴールドシップ

2005 [15‐16‐09‐09] ディープインパクト

2000 [15‐15‐15ー08] エアシャカール

1998 [14-14-11-08] テイエムオペラオー

1993 [18‐17‐15ー12] ナリタタイシン

上記は追い込み優勝の皐月賞馬。ダービーでの成績は[1.1.3.1]です。

ソールオリエンスの母系は欧州色が濃い血統で、凱旋門賞馬(Sadler's Wells・MontjeuRainbow Quest)を複数内包しています。ここにキタサンブラックを迎えたことでダービーでは高いレベルでの急加速力不足が懸念材料となりそうです。サンデーの代重ねが進んだことから血統の転換期を迎えている日本競馬界では、全体的にキレの鈍化が見られそうなので杞憂に終わる可能性はありますが、東京2400mでペースの落ち着きかつ緩急の大きさは今回の皐月賞と真逆の質感となります。つまりは、真逆の質感でパフォーマンスを上げてくるであろう馬がいる場合、ライバルはその馬となります。

横山武史騎手はエフフォーリアで挑んだダービー制覇がここで活きてくる可能性もあります。一気にアクセルを踏んだがゆえに最後の最後で末脚が鈍ったところを狙われて悔しすぎる惜敗となったのが2021年日本ダービー。その経験を活かすとすれば、ソールオリエンスのダービー制覇も見えてきます。元来、ガツンと仕掛けるのが持ち味の横山武史騎手ですので、どのあたりまでその経験を活かす気でいるのか、これからの言動に要注目していきたいですね。

 

―――敗戦から見えてくるもの

58.5 → 64.4 グラニット

58.9 → 64.0 タッチウッド

59.3 → 63.1 ベラジオオペラ

59.6 → 61.2 タスティエーラ

60.0 → 61.1 メタルスピード

60.2 → 60.9 ファントムシーフ

60.8 → 59.8 ソールオリエンス

各馬の前後半1000mはこのぐらいになると推定。逃げたグラニット、追いかけたタッチウッドやベラジオオペラがいかにオーバーペースだったかは言うまでもありません。18頭立てで通過順位[8ー9ー9ー8]のメタルスピードですら60.0→61.1という前傾ラップを刻んでいます。

そう考えるとタスティエーラの優秀さや適性が明確になってくる気はしないでしょうか。タスティエーラは前半59.6秒で折り返したにも関わらず後半でも61.2秒で駆け抜ける失速耐性と末脚の持続力の優秀さを魅せています。共同通信杯では終盤に末脚を伸ばすことができなかったことと併せて考えると、タスティエーラは「消耗戦に強い自力勝負型」というキャラを確定することができます。

次にルメール騎手の時計感覚に着目します。混戦の皐月賞であったこと、ジョッキーカメラからソールオリエンスをマークしている素振りが感じられないことなどから、ファントムシーフのこの位置取りはルメール騎手が自分で選択したものということになります。そこで刻んだタイムは60.2→60.9。出来得るかぎりイーブンラップで効率の良い走りを心掛けていたことがうかがえます。終盤の脚力が強烈な馬、強烈な失速耐性を持つ馬が前にいただけで、この3着は満点騎乗のもとで生み出された結果だということになります。こういった時計感覚があるからこそ結果を出し続けることができるのでしょうね。ファントムシーフ自身は日本ダービーに向けて、急加速力不足が喫緊の課題となりそうです。成長による補完は血統的に望みが薄く、騎手によるポジショニングや追い出しのタイミングなどでキレに秀でる馬を相手にどこまで対抗できるかが結果に直結してきそうです。

最後に、日本ダービーに向けて注目しておきたいのはベラジオオペラ。この馬の敗戦で過去の馬と重なったのがスマイルジャックスマイルジャックは1600~1800mを使われスプリングSで待望の重賞制覇。挑んだ皐月賞では先行し9着に敗戦。ローテーション的にも余力がなくガス欠したのは無理もありません。ベラジオオペラは関西馬でありながら3走連続で関東輸送。皐月賞は展開的な消耗度はもちろんのこと、重馬場のスプリングSで激走から中3週はエネルギー不足だったのかもしれません。「ダービーまでは距離不問」という持論から、日本ダービーでベラジオオペラの距離不安を勘ぐるのは愚行です。良馬場の皐月賞ならば本命視したぐらいの能力の持ち主ですから、重馬場の皐月賞から良馬場の日本ダービーへと舞台替わりで、末脚を主体とした軽快なスピードや脚質不問のレースセンスなどを活かしパフォーマンスアップする可能性は大いにあります。

 

・ソールオリエンス:ホンモノ

・タスティエーラ:消耗戦得意の自力勝負型

・ファントムシーフ:幅広い対応力あり(≒器用貧乏?)

・ベラジオオペラ:日本ダービー激走可能

【皐月賞2023】

■傾向と対策

22年(良) 35.2‐49.6(37.3-37.4)-34.9 1:59.7

21年(稍) 36.3-47.3(35.4-35.4)-37.0 2:00.6

20年(稍) 35.6-49.3(37.1-37.5)-35.8 2:00.7

19年(良) 34.8-48.6(36.4-36.8)-34.7 1:58.1

18年(稍) 35.5-48.0(35.6-36.5)-37.3 2:00.8

17年(良) 35.1-48.2(36.3-36.5)-34.5 1:57.8

16年(良) 34.2-48.1(35.7-36.4)-35.6 1:57.9

15年(良) 35.2-48.3(36.2-36.5)-34.7 1:58.2

上記は路盤改修後の皐月賞レースLAP。良馬場では高速決着が定番。終盤の早さだけで高速決着に押し上げたわけではない≒巡航速度の優位性が求められていることが分かります。巡航速度の優位性は距離短縮指向の能力である程度は推し測ることができます。良馬場での好走馬にはコディーノロゴタイプイスラボニータペルシアンナイト・アルアインがいるように、マイルGⅠで活躍する能力が優位に働くということを示しています。道悪馬場では特殊なレース展開ばかりですが、馬場状態に関わらず持続力優位の能力が活きやすいレースであることは明らかです。

 

22年(18頭) 1着:[06-03] 2着:[04-03] 3着:[16-14]

21年(16頭) 1着:[04-04] 2着:[01-01] 3着:[10-08]

20年(18頭) 1着:[12-07] 2着:[06-04] 3着:[10-09]

19年(18頭) 1着:[07-07] 2着:[04-04] 3着:[04-05]

18年(16頭) 1着:[04-04] 2着:[05-05] 3着:[02-02]

17年(18頭) 1着:[05-05] 2着:[05-05] 3着:[05-03] 

16年(18頭) 1着:[12-10] 2着:[15-13] 3着:[09-05] 

15年(15頭) 1着:[11-07] 2着:[05-03] 3着:[02-02]

上記は1~3着馬の位置取りを[3角-4角]の順で示したもの。路盤改修後の皐月賞好走馬で4角5番手以内だったのは16で占有率は66.6%。一方で4角10番手以下から好走したのは16年の1,2着馬。前後半58.4-59.5のハイペースに加えて直線強烈な追い風(向こう上面向かい風)だったことから前後の利が大きかったレースだったと記憶しています。このことから先行力のある馬(≒持続力寄りの能力バランス)はレース運びにおいて優位であるということを察することができます。直線の短さだけが先行力を優位にしているのではなく、序盤のポジショニング争いにおいても必要な能力であることが要因だと考えます。さらに細かく見ていくと4番人気以下で好走したのは12頭。うち9頭が4角5番手以内からの好走でした。例外の2頭は16年1着ディーマジェスティ・20年3着ガロアクリーク・21年3着ステラヴェローチェの3頭。「激走の資格は先行力にあり」と考えてよいでしょう。

 


・距離短縮指向のスピード(良馬場)

・先行力を主体とした立ち回りの巧さ

・持続力優位の能力バランス

 

■各馬分析

・フリームファクシ

23.7-25.1-24.5-23.4-23.0 1:59.7 きさらぎ賞

きさらぎ賞は前半緩い流れから後半はゴールまで加速気味のミドルスパート勝負。時計は優秀の部類で甘め評価で3勝クラス善戦レベル。通念的に3勝レベルでクラシック勝ち負けということから考えると能力的には打点が届いていると判断できるのでは。

祖母Soninke(英)からは日本ダービー馬・ロジユニヴァース秋華賞馬・ディアドラ、安田記念馬・ソングラインなど日本活躍馬が多数輩出されています。ダートでの活躍馬もおり、血統の全体的な特徴は欧州指向(スピード指向)を活かしたタフな競馬でパフォーマンスをあげているということでしょうか。フリームファクシはディアドラの半弟ですが、気性の雰囲気は叔父ノットアローンに似ています。ノットアローン菊花賞で暴走してしまいましたが、この馬も序盤での折り合いに苦心している姿がみられます。新馬戦で逃げてしまったがゆえの苦労かもしれません。立ち回りの巧さは気性面へいかにアプローチするかがカギとなりそうです。

将来的な完成像は「全体的なスピードを武器に失速耐性を主体とした末脚の総合力でまとめる競馬」となりそうです。良馬場で末脚のキレの要求度が高いレースは苦手そうで、血統的に考えても今後の成長は鈍そう。一方でタフな皐月賞となれば序盤の追走力優位性や失速耐性が優秀そうな末脚から能力の方向性は合致してきます。

 

・ソールオリエンス

24.5-25.1-25.0-24.4-23.2 2:02.2 京成杯

中盤過ぎまで緩い流れからのスパート勝負。走破時計的には評価なし。

勝利したソールオリエンスが4角膨らんだのは逆手前の影響。この影響から再度立ち上げてグンとアクセルを踏んだところがゴール。上がり特化型のレースで終盤にミスがありながら上がり最速で突き抜けた点は評価する点です。荒々しい競馬にも関わらず完勝したことから時計レベルの低さやメンバーレベルで評価するのは慎重にすべきでは。

血統的にはキタサンブラック×Motivator×クエストフォーフェイムでスタミナ指向。路盤改修以降の皐月賞は高速化が進み、スタミナ指向の馬は苦戦傾向にあります。半兄ヴァンドギャルドや欧州指向が強い構成からも成長曲線は秋以降に上昇しそう。ソールオリエンスの2連勝はともに追走力の要求度が低くかつ少頭数でした。良馬場の皐月賞では距離短縮指向のスピード不足や追走経験不足、さらには多頭数替わりで立ち回りへの不安も払拭できていません。潜在能力の高さは評価しつつ人気に見合った勝率は疑ってかかりたいと考えます。

 

・ベラジオオペラ

35.4-24.0-24.7-24.8 1:48.9 スプリングS

35.9-25.4-24.1-22.6 1:48.0 セントポーリア賞

36.9-25.1-24.0-22.0 1:48.0 新馬

デビュー戦、セントポーリア賞と前半が緩く上がり特化型のレースを2連勝。つづくスプリングSは戦前から追走力の忙しさによりパフォーマンスが伸び悩むのではという懸念がありましたが、その懸念を払拭する走りをしました。序盤が早く、中盤も引き締まり終いバテというレースLAP。序盤はダッシュを効かせポジションを取り、中団追走でもこれまでよりだいぶ追走力を引き上げながら、終盤では上がり最速で突き抜けました。

評価したいのは「ハイペース追走」「余力減少での末脚発揮」という2点。基本的に若駒というのは初めての経験、特に苦しい経験に出くわすとパフォーマンスが伸び悩むケースが多くあります。大概の馬がそういった苦い経験をもとに成長していく傾向にあります。しかし、ベラジオオペラは重賞という舞台でこの初体験を受けながらパフォーマンスを上げてきました。負かしたホウオウビスケッツやメタルスピードも決して弱い馬ではありません。

血統的に米国色の弱まりが追走力不足に懸念を向けられそうですが、スプリングSでの走りから距離短縮でのハイペースに対応できたことからレース内容で血統的傾向を否定できます。むしろ、末脚を引き出す競馬で結果を出した対応力&順応性を評価しておきたいです。父ロードカナロアは母系の特徴を引き出すのが得意な種牡馬。母系はアイドリームドアドリームからつづくエア冠名の名馬がズラリと勢ぞろいする血統。祖母の全兄エアシェイディや全姉エアメサイアらはマイル指向のスピードを持ちつつ小回りG1で好走実績を持ちます。そこにハービンジャー×ロードカナロアと重ねられたベラジオオペラ。「小回り&高速馬場での中距離戦」が主戦場になってくる血統的イメージは高速馬場の皐月賞に合致してきます。重馬場で好走後の中3週で本番。当日の馬場と自身の状態が好走のカギとなりそうです。

 

・ファントムシーフ

35.3-25.2-23.7-22.8 1:47.0 共同通信杯

23.5-25.3-25.2-23.8-22.4 2:00.2 野路菊S

欧州色の強い血統かつ日本的主流血統を持ちません。それにもかかわらず新馬戦では阪神1600で末脚がキレ、つづく野路菊Sでも上がり特化型の着差がつきにくいレースを抜け出しました(キックバックを受ける教育的競馬のオマケつき)。共同通信杯は無理せず前目につけつつ末脚を引き出したルメール騎手の好騎乗が光りました。序盤早く、中盤緩く、終盤はミドルスパート気味で、全体としては緩急の大きいかつ末脚のトップスピードの要求度が大きいレースでした。

ハービンジャー×母父Medagriad'OroでDansili同血2×2のクロス持ち。さらにはNorthernDancer5×5×5×5という血統。コテコテになりそうな質感ですが、ここまでの走りからトップスピードは問題ない水準にあります。さすがに急加速力では日本主流血統を主張する馬たちには劣りますので、緩急の少ない競馬や斤量やコース形態の負荷が大きい状況で武器となる持続力を主体とした総合力の高さを活かしたいところです。

 

・タスティエーラ

23.5-25.0-24.8-23.7-23.4 2:00.4 弥生賞

緩い流れからロングスパート勝負となった弥生賞共同通信杯では主流血統を持つ馬たち相手にキレ負けしたタスティエーラが巻き返しての勝利。サトノクラウン×マンハッタンカフェという血統構成からも、持続力を活かした競馬が得意な能力バランス。弥生賞のレースぶりで4角から追い通しだったようにギアチェンジ性能(≒急加速力)に課題が残ります。これは血統的にも成長余力が多くないようで、特徴として捉えていくしかなさそうです。

良馬場での皐月賞は詰めがあまくなる可能性が高く、相対的にタフな質感となればなるほど好走率は上昇するのでは。グラニットが逃げるようだとキレの要求度が低下することからレース展開は向くのでは。共同通信杯で賞金加算ならず押せ押せで弥生賞を使ってきたことから余力がどれほどあるかは注意しておきたいところ。

 

・トップナイフ

米国血統が主張した追走力や全体的スピードが武器。血統的に考えても末脚のキレで勝負に持ち込むのは至難の業といった能力バランス。未勝利勝ちが一貫ラップ+ややバテを突き放す強い競馬。その後、横山典弘騎手はあえて末脚を引き出すような競馬を行いました。勝負となったホープフルSでは本来の能力を全開に引き出す競馬。

まさに「育てている」という状況。

弥生賞。レース全体としては緩い流れからのロングスパート勝負。発馬を決め、ハナを奪い主導権を握ろうと思えばできたテンであえて控える素振り。中盤の緩さからか行きたがる感じをなだめて追走。終盤も前が空かないこともありますが、馬ごみが得意ではないという気性を知りながら追い出しを待って待ってインを突く競馬。「勝ち」よりも求めたものがあったレースだったという印象を非常に強く感じます。

華やかな血統でもなく、本番直行というローテが珍しくない時代にあるなかで前哨戦をしっかり使う意思のある調教師、凡走があればすぐに人気が下がるであろうキャラ。そして、主流血統に劣るであろう末脚力をなんとか鍛えて少しでも弱点を補完しようとする、ここまでのストーリーは非常に好感が持てます。トップナイフ陣営としては少しでもタフな皐月賞となることを願うばかりでしょう。

【フェブラリーS2023】

フェブラリーS考察

 

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・ベテラン馬激走条件

【1】とにかく強い : 該当なし

【2】ワンターンマイルG1実績 : テイエムサウスダンソリストサンダー

【3】根岸S勝利 : 該当なし

南部杯好走馬 : ヘリオス

根岸S酷斤量克服馬 : 該当なし

 

今年の出走予定メンバーを取扱説明書を参考にするとテイエムサウスダン・ソリストサンダー・ヘリオスの3頭がピックアップされます。それぞれ特徴と激走候補に該当するのかどうか見ていきましょう。

 

テイエムサウスダン

米国血統の1400巧者で先行力とパワーが武器。スピードレンジと失速耐性から考えて1400m特化型の能力を持つため、距離短縮ではスプリント指向のスピード不足、距離延長ではマイル指向の末脚不足という欠点が露呈します。22年根岸Sは額面は差し競馬となりましたが例年にハイペースで流れたこと、22年フェブラリーSは超高速馬場&序盤の負荷が極めて軽いといった要素が揃ったこと。昨年同時期のパフォーマンスを再現する可能性を追い求めるのは酷と考えます。もちろん当時の陣営がそれら能力バランスを熟知していながらマイルに適応させようと苦心させた結果がこのような功績となっているのでそれに関しては称賛の言葉しかありません。

前走はトモに甘さが感じられたように、デキはイマイチだったのかもしれません。体重減でも緩い馬体でしたが1400mであの程度の先行で直線見せ場もなく失速は成長曲線の下降を疑います。それは無理もなく、1400巧者を1600指向に適応させたと思えば今度は1200mで好走しろとムチ打ってきたのですから消耗もするでしょう。

そしてここにきて岩田康成騎手からルメール騎手への乗り替わり。根岸S時にも言及したので詳しくは割愛しますが、テイエムサウスダンの失速耐性を引き出すタイプではない騎手への乗り変わりは悪手でしかありません。状態もイマイチで中2週での変わり身疑問、昨年の再現可能性も低く、成長曲線も下降線、さらには人馬のミスマッチとくれば厳しい評価となります。

 

ソリストサンダー

末脚の総合力に優れた晩成型の1700巧者。ソリストサンダーは距離延長によって芝指向の末脚を活かしてパフォーマンスを上げてきた馬です。短距離指向の追走力やパワーの優位性が要求されるレースは適性外だったと割り切ることができます。22年根岸Sは近年にないハイペースで流れ、22年南部杯は不良馬場でスプリント能力のある馬が2~4着する質感を先行と、短距離指向の追走力不足を露呈させました。

武蔵野Sや南部杯といったワンターンマイル重賞での好走が複数回あり、昨年のフェブラリーSも先行力がモノをいう質感のなかで末脚を伸ばして4着と適性はあります。今年は都内でも強い冷え込みや降雪など寒気の影響が大きく、少なくとも近3年よりは時計の掛かるダートで開催が進んでいます。今週末を降雨量ゼロで迎えるようならば相応の時計が掛かるような馬場が用意されると考えます。

門司Sから中1週の臨戦過程に泣いた21年、超高速馬場で追走力不足に泣いた22年から条件は好転します。「距離延長指向の末脚が活きるワンターンマイル」となったフェブラリーならば今回のメンバーでも適性は筆頭クラスで十分に狙いは立ちます。あとは状態次第ですが、勝馬調教班は「GO!」の判断を下しました。

 

ヘリオス

準スプリンターのオルフェーヴル産駒。スプリント指向の先行力が表面的でしたが、それまでよりも緩い展開でも末脚を伸ばしたように加齢とともに少し成長がありました。そのあたりはステイゴールドの血が成せる業でしょうか。

【南部杯2022】 - Nearco Note

南部杯ではヘリオスのことをこのように評価しておりました。
この仮説は不良馬場の南部杯を2着といいうことで立証。根岸S2着馬がその後の地方交流重賞で惜敗を繰り返したのは決着時計の差にありました。芝指向のスピードを持つヘリオスにとって時計が掛かるロカール競馬場は適性が真逆となります。前半がほぼ直線というただでさえ時計が出やすい盛岡1600mで、道悪の高速決着となり距離短縮適性の要求度が高まったことを利して2着したのがヘリオスでした。3,4着にも短距離に良績のある馬が浮上し、同ポジションを走った16~1700mに適性のあるソリストサンダーが沈んだことからも22年南部杯に問われた適性は明確であると思います。

さて、転厩後初戦の根岸S。陣営は手探りといい、急ピッチに乗り込まれたことからも状態面はそこそこ止まりだったのでしょう。そのことからも前走をノーカウントにするのは受け入れます。ただ、状態が戻ったとしても距離延長かつ末脚の要求度が高まる東京ダ1600mでは好走可能性が低下すると判断します。ダート馬としては小柄な馬体重(前走466kg)にとって斤量58kgは急加速力を削ぐ要素です。これに輪をかけてパサパサの良馬場となってしまえばさらに距離延長指向の能力が要求されるはずです。先行策から終盤もまとめるのは酷となり人気薄の激走候補とするにはネガティブ要素が多すぎると判断します。

 

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三浦皇成いよいよGI制覇か」といった機運が高まりつつあるなかで飛び込んできた衝撃の一報がギルデッドミラー引退。三連覇の懸かるカフェファラオらが早々にサウジ遠征を決定するなか、国内ダート上位馬で残っていたクラウンプライドのもとへも招待状が届きフェブラリーSはさらに空洞化。その状況下にあって「三浦念願達成なるか」という話題は最大トピックだっただけにギルデッドミラーの引退は文字通り衝撃でした。根岸S後はかなり慎重な判断をしていたレモンポップ陣営がこの一報を機に参戦を決定。あらかたレモンポップ不参加の方向で話がまとまっていたのか戸崎騎手はドライスタウトでの参戦をすでに表明。どこに真実があるのかは分かりませんが、絡み合う運命と欲が現在の状況に至っていることは間違いなさそうです。

 

■レモンポップ

先行力と末脚のバランスが素晴らしく総合力の高い馬。末脚は米国血統が主張しているようにワンペース寄りの質感。これまで先行しながら10戦中8戦でメンバー上位の上がりを計測しているように他馬を消すとこの馬自身の走りはいわゆる「差し馬のそれ」を感じさせています。短距離馬にありがちな先行力と失速耐性で粘り切るといった走りしかできないというタイプではなさそうです。

 

今回最大の焦点は「レモンポップが1600mで勝ち切れるかどうか」でしょう。

20年 34.8‐24.5-37.1 1:36.4 [1:36.8] レモンポップ
13年 35.0‐25.1-37.8 1:37.7 [1:37.7] アジアエクスプレス
11年 34.6-25.1‐38.0 1:37.7 [1:37.8] オーブルチェフ

22年 34.9-24.5‐37.2 1:36.6 [1:38.0] コンティノアール
19年 33.9-25.2-37.1 1:36.2 [1:38.2] デュードヴァン
16年 35.6-24.6-37.5 1:37.7 [1:38.2] エピカリス

18年 35.3-24.5-38.3 1:38.1 [1:38.2] ガルヴィハーラ
15年 34.9-24.9-37.6 1:37.4 [1:38.3] ラニ
14年 35.6-25.8-36.6 1:37.1 [1:38.4] タイセイラビッシュ
13年 35.0-24.6-38.4 1:38.0 [1:38.4] ダイチトゥルース
18年 35.6-25.7-37.0 1:38.3 [1:38.4] メイクハッピー

これは近年の2歳・東京ダ1600mの馬場差補正後のタイム上位10傑。

ご覧のとおりレモンポップはぶっちぎりの時計を叩き出しています。2歳でこれだけのパフォーマンス発揮≒ある程度の早熟性や距離短縮指向のスピードがあることを示しています。レモンポップが5歳で初重賞制覇ということからも一介の米国血統早熟馬だった可能性は否定されています。つまりは距離短縮指向の高いスピードを示した一戦だったと解釈することができます。

バランスの良い先行力と末脚を存分に発揮でき、かつワンペース気味な末脚で押し切ることの可能なダ1400m≒根岸Sで高いレベルのパフォーマンスを示しました。距離短縮指向のスピードを持つ馬がフェブラリーSを優勝したケースは05年メイショウボーラーや16年モーニンが思い出されます。この時は不良馬場や重馬場といった時計の出やすい馬場。基本的に寒気と乾燥により馬場が重くなりやすいフェブラリーSは先行力を主体とする距離短縮指向の馬を狙うのはご法度となります。昨年のテイエムサウスダン激走も重馬場(超高速馬場)だったことが大きな要因です。2歳時から圧倒的なスピードを誇り、古馬となってからも1400m寄りの能力を発揮し続けているレモンポップは週末の馬場状態が勝ち切れるかどうかの大きなカギとなってくるでしょう。

さて、ここからは私の個人的な印象です。このレモンポップという馬、かつダート界を賑わせたベストウォーリアに似ていませんかね。ベストウォーリアは先行力と末脚のバランスの良さでダ14~1600を主戦場とし、南部杯2連覇やフェブラリーS隔年好走しました。1400mで快勝できるだけのスピードを持っているため、先行力が活きる南部杯では強さを発揮し、コースレイアウトが逆転するフェブラリーSでは詰めが甘くなるという特徴を持っていました。血統といい、戸崎騎手が育て上げてきた点といい、能力バランスといい、南部杯>フェブラリーという適性といい、レモンポップとベストウォーリアは非常に酷似した境遇に置かれているとは思わないでしょうか。当日の馬場状態と詰めの甘さに注意したいところです。

 

■ドライスタウト

先行力と末脚のバランスが良い馬。これまでで目立ったパフォーマンスを発揮したのはオキザリス賞。そのオキザリス賞を馬場差補正後のタイム順に並べると以下のとおりになります。

20年 35.0‐11.9-36.5 1:23.4 [1:24.2] ドライスタウト

14年 35.0‐12.5-37.6 1:25.0 [1:25.0] ブルドックボス

18年 35.6-12.5-36.3 1:24.4 [1:25.2] デルマルーブル

20年 34.8‐12.1-37.8 1:24.7 [1:25.3] バクシン

22年 34.9‐12.1-38.1 1:25.1 [1:25.4] ぺリエール

16年 34.4‐12.1-37.4 1:23.9 [1:25.5] シゲルコング

19年 35.9‐12.5-36.7 1:25.1 [1:25.6] メイショウテンスイ

15年 34.9-12.5‐37.5 1:24.9 [1:25.6] オーマイガイ

17年 35.8‐13.4-36.8 1:26.0 [1:26.2] ダークリパルサー

純粋な走破時計でも補正後の時計でもぶっちぎりで早いのはご覧のとおりです。次いで早かったのは2014年で勝馬はのちにJBCスプリントを優勝するブルドックボス。

12.1-11.0-11.9-11.9-12.0-12.0-12.5 21年オキザリス

やや時計の出やすい馬場に加えて加減速のないミドルラップを刻み続けていったレース。これを番手から末脚も使ってタイムを押し上げたドライスタウトには1400指向のスピードに秀でた能力があると判断できます。これを逃げたインコントラーレがその後短距離路線で、追走に苦労するも直線で末脚を発揮したヴァルツァーシャルが距離延長でそれぞれ活路を見出していることからも22年オキザリス賞の質感は感じ取れるのではないでしょうか。

アフリート・リアルシャダイNijinskyといった血が並ぶことから成長力に期待できそうなことはドライスタウトの未来を考えても明るい材料だと思いますが、フェブラリーS視点で距離短縮指向に秀でた能力を発揮していることは、詰めが甘くなる可能性を示しているはずで人気に見合った勝率は疑ってかかりたいところです。

 

■レッドルゼル

短距離指向の追走力と末脚を兼備した馬。川田騎手が手綱を取ってからは末脚を活かす形で追走力を末脚に転化。20年カペラS(中山ダ1200)を追い込み好走、根岸S優勝のパフォーマンスはまさに短距離指向を示すもの。距離延長では緩急の大きさが追走力の良さを相殺するため末脚不足につながります。21年フェブラリーS4着は立派ですが、例年よりも軽い砂質であること川田騎手のコース取り含め最高の騎乗があってのもの。前走JBCスプリントは盛岡の道悪でトラックバイアスがかなり偏った馬場。出遅れ&直線だけの競馬で4着は巻き返しを期待したいとことですが、距離延長適性がなく当日はパサパサの良馬場が想定されるため期待値はかなり低いと考えます。

 

■ショウナンナデシコ

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■結論

 

本命は、◎メイショウハリオ

 

37.5‐36.5-36.8 1:50.8 [10‐10‐09‐09] みやこS 1着

35.9-37.1‐37.2 1:50.2 [14‐14‐11‐08] マーチS 1着

62.5→11.4-12.0-13.0-12.0-12.4 2:03.3 帝王賞 1着

 

オープンクラスでの3勝をみると「高速馬場で脚を溜める競馬」となったみやこS・マーチS、「時計の早い決着」となった帝王賞という特徴がうかがえます。これはメイショウハリオが中距離では距離短縮指向のスピードの要求度が高い方が好走しやすい能力を持っていることを示します。

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また、帝王賞が良い例だったように勝ち切るためには「外的要因によるアシスト」が必要な馬でもあります。帝王賞はスワーヴアラミスが道中動いたシーンで手綱を抑えてスタミナを温存し、あのオメガパフュームやあのチュウワウィザードに勝利。一方で東京大賞典ではサンライズホープが動いたところで呼応するかのように動いてしまい末脚が鈍ってしまいました。騎手の胆力が試されている部分もありますね。

近年のフェブラリーSは超絶イン前有利馬場や超高速馬場が続いたために、先行力や距離短縮指向のスピードが大きな優位性を持ちました。金曜夜現在で当日の天気は春の暖かさ。週中も目立った降雨がなくパサパサの馬場状態。これは距離延長指向の能力が要求されることを示唆し、帝王賞をはじめ中距離重賞3勝のメイショウハリオにとって絶好の馬場状態となる可能性が高いです。逆にマイル視点で距離短縮指向のスピードに優位性を持つ馬は詰めの甘さが強調される可能性もあります。

 

今年のメンバーは全体的に短距離重賞で良績を挙げてきた先行馬が多い印象です。あまり色気のある先行勢がおらず、あくまで「自分の競馬をしてどこまで」というタイプが多数を占めます。そこに僅かでもレモンポップ・坂井瑠星騎手にはスムーズな競馬をさせてたまるかという気概が生まれれば、ただでさえ比重が前の隊列でさらに前へ負荷が掛かるとは思えないでしょうか。これが外的要因によるアシストとなります。

 

唯一の懸念は左回り。チャンピオンズCやJBCクラシックを見ても直線で明らかに内へ刺さります。仮説を立てるならば、「中距離でスタミナ消耗しているとササる」のではないでしょうか。今回はマイル戦。余力十分で直線を迎えられれば中距離の左回りでみせたような悪癖は出ないのではと希望的観測をします。そもそも今年のメンバーはすべて一長一短。今年のフェブラリーSは距離延長適性が要求され、かつ展開利で浮上する馬を狙うとし本命をメイショウハリオとすることにしました。レモンポップ・ショウナンナデシコが踏ん張るところをソリストサンダーが追い詰めるなか、外からメイショウハリオが待ってましたと飛んでくるシーンを絵図とします。

 

あとは運があることを祈るばかりです。

 

【フェブラリー取扱説明書 2023ver】

■フェブラリー取扱説明書

<ベテラン馬の激走条件>

【22年5歳5歳4歳】

【21年4歳8歳8歳】【15年5歳5歳5歳】【09年4歳4歳7歳】

【20年6歳7歳6歳】【14年4歳5歳6歳】【08年6歳8歳6歳】

【19年5歳6歳5歳】【13年5歳8歳7歳】【07年5歳7歳6歳】

【18年6歳5歳8歳】【12年6歳6歳6歳】【06年4歳5歳6歳】

【17年4歳7歳5歳】【11年5歳7歳4歳】【05年4歳4歳5歳】

【16年4歳4歳5歳】【10年5歳4歳5歳】【04年5歳4歳7歳】

 

上記は東京コース改修以降のフェブラリーS3着以内の馬齢を示したものです。全19R中15Rで4歳or5歳馬が勝ち馬となっています。東京ダ1600mで行われるフェブラリーSはその性質上から若さ溢れる馬が好走しやすい傾向にあります。そのような状況にも関わらず好走する6歳以上の馬にはいくつかの共通点が存在していることが判明しています。

 

21年2着/エアスピネル 前年武蔵野S3着(芝G1実績あり)

21年3着/8歳ワンダーリーデル 根岸S2着

20年1着/6歳モズアスコット 根岸S勝利(斤量58kg)

20年2着/7歳ケイティブレイブ GⅠ3勝馬

20年3着/6歳サンライズノヴァ 前年南部杯勝利

19年2着/6歳ゴールドドリーム FS好走 国内GⅠ6連続連対中

18年1着/6歳ノンコノユメ 根岸S勝利 FS好走

18年3着/8歳インカンテーション FS好走

17年2着/7歳ベストウォーリア FS好走

14年3着/6歳ベルシャザール 前走JCD勝利

13年2着/8歳エスポワールシチー FS好走 サクセスブロッケン世代

13年3着/7歳ワンダーアキュート FS好走 トランセンド世代

12年1着/6歳テスタマッタ FS好走 トランセンド世代

12年2着/6歳シルクフォーチュン 根岸S勝利 トランセンド世代

12年3着/6歳ワンダーアキュート トランセンド世代

11年2着/7歳フリオーソ 国内GⅠ6連続連対中

09年3着/7歳カネヒキリ 国内GⅠ3連勝中 カネヒキリ世代

08年1着/6歳ヴァーミリアン 国内GⅠ4連勝中 カネヒキリ世代

08年2着/8歳ブルーコンコルド 前年南部杯勝利

08年3着/6歳ワイルドワンダー 根岸S勝利

07年2着/7歳ブルーコンコルド 前年南部杯勝利

07年3着/6歳ビッググラス 根岸S勝利

06年3着/6歳ユートピア 前年南部杯勝利


上記は6歳以上で好走した馬と特記事項を示したものです。浮かびあがる点は3つ。

1つ目は、「とにかく強い」。ヴァーミリアンカネヒキリフリオーソのような当時国内G1で常に勝ち負けしているといった能力の高さは加齢に影響されにくいようです。とにかく「今」強い馬は加齢を理由に疑う必要はありません。

2つ目は、「ワンターンマイルG1の実績」。テスタマッタエスポワールシチーベストウォーリアが隔年でフェブラリーSを好走しています。この「隔年で好走」という事実を重く受け止めるべきです。また南部杯というFS最重要前哨戦での好走もベテラン馬の好走要因として複数挙げられています。

3つ目は、「根岸S勝利」。加齢とともにスピード能力が衰えるなかで、高いレベルのスピードとキレが要求される東京ダ1400の根岸Sを勝ち切るということは、その結果を持って即ち加齢による衰えを否定していることになるのだと考えます。


※20年2着ケイティブレイブや21年エアスピネルはサンプルとしては異端。ここをケアするには「GⅠ実績馬は注意」と手を広げるしかなさそうです。これをピンポイントで狙い打つのは難しそうで、馬券的に余裕がある&妙味を追い求めるのならば取り入れてみてもいいのでは。

 

 

南部杯フェブラリーS

(南部杯着順→フェブラリーS着順を表記)

22年 該当なし

21年 該当なし

20年 1着 → 3着(3人気)サンライズノヴァ

19年 2着 → 2着(2人気)ゴールドリーム

18年 該当なし

17年 2着 → 2着(5人気)ベストウォーリア

16年 該当なし

15年 1着 → 3着(3人気)ベストウォーリア

14年 2着 → 2着(1人気)ホッコータルマエ

13年 1着 → 2着(9人気)エスポワールシチー

12年 3着 → 2着(4人気)シルクフォーチュン

11年 5着 → 3着(4人気)バーディバーディ

10年 1着 → 1着(1人気)エスポワールシチー

    2着 → 3着(2人気)サクセスブロッケン

08年 1着 → 2着(7人気)ブルーコンコルド

    2着 → 3着(3人気)ワイルドワンダー

07年 1着 → 2着(2人気)ブルーコンコルド

06年 1着 → 3着(11人気)ユートピア

    2着 → 2着(2人気)シーキングザダイヤ

05年 該当なし

04年 1着 → 1着(1人気)アドマイヤドン

02年 1着 → 1着(1人気)アグネスデジタル

    3着 → 3着(2人気)ノボトゥルー

01年 2着 → 2着(2人気)ウイングアロー

00年 3着 → 1着(6人気)ウイングアロー

 

上記は2000年以降のフェブラリーSにおいて『南部杯好走→フェブラリーS好走』に該当する馬を挙げたものです。なお、南部杯好走馬の出走がなかった03年&09年を対象外としています。

南部杯好走馬がフェブラリーSで好走したのは21レース中16レース。近年はフェブラリーSにおける南部杯の重要度は低くなっているように思えますが、過去には11人気3着ユートピア、7人気2着ブルーコンコルド、9人気2着エスポワールシチーなど人気薄で激走しています。ワンターンマイル戦というコース形状を考えても南部杯こそがフェブラリーSでの最重要レースであることが分かると思います。

 


根岸Sの酷斤量>

20年1着(58kg) → FS1着モズアスコット

20年2着(58kg) → FS不出コパノキッキング

18年1着(58kg) → FS1着ノンコノユメ

17年2着(58kg) → FS2着ベストウォーリア

16年3着(58kg) → FS11着グレープブランデー

13年3着(58kg) → FS4着セイクリムズン

12年3着(58kg) → FS1着テスタマッタ

04年3着(59kg) → FS9着ノボトゥルー

 

上記は根岸Sで酷斤量(58kg以上)を背負って好走した馬の同年フェブラリーS成績を記したものです。次走フェブラリーSで凡走となったのはノボトゥルーグレープブランデーで過去にフェブラリーS優勝経験のある馬でした。またセイクリムズンは4着と善戦止まりでしたが16番人気と超人気薄でした。これらを踏まえると「根岸Sの酷斤量はフェブラリー好走へのカギ」と考えることができます。

 


~総論~

・6歳以上は以下の条件該当が必要

【1】とにかく強い【2】ワンターンマイルG1実績【3】根岸S勝利

南部杯好走馬は特注

根岸S酷斤量克服馬

【ホープフルS2022】

■ミッキーカプチーノ

22年 12.4-10.9-11.9-12.6-12.2-11.9-11.9-11.8-11.5-12.0 / 1:59.1 (2:00.4)

21年 12.5-11.3-12.3-12.8-12.7-11.9-11.5-11.7-11.4-12.5 / 2:00.6 (2:01.7)

20年 12.9-11.8-13.1-13.2-12.5-11.9-11.7-11.7-11.4-12.0 / 2:02.2 (2:02.0)

19年 12.6-11.1-12.0-12.0-12.0-11.5-11.6-11.6-11.8-12.7 / 1:58.9 (2:00.4)

18年 12.5-11.1-12.0-12.2-12.3-12.1-12.1-11.9-11.4-12.0 / 1:59.6 (2:01.2)

17年 12.6-11.5-12.3-12.7-12.9-12.4-12.0-11.7-11.3-12.0 / 2:01.4 (2:02.5)

16年 12.3-11.3-12.7-12.2-12.5-12.4-11.7-11.9-12.1-11.9 / 2:01.0 (2:02.0)

15年 12.5-11.4-12.2-12.7-12.9-12.7-12.7-12.3-11.6-11.6 / 2:02.6 (2:03.4)

14年 12.5-11.3-12.2-12.3-12.5-11.9-11.8-12.1-11.9-12.3 / 2:00.8 (2:01.6)

※カッコ内は馬場差補正タイム

 

中山競馬場コース改修以後の葉牡丹賞を見ていきます。葉牡丹賞勝利馬はダービー馬となったレイデオロが筆頭株でしょう。そのほかにもトーセンバジル、メートルダール、ジェネラーレウーノ、ノースブリッジらがいるようにその後出世していく馬たちが多く存在します。今年はミッキーカプチーノが1分59秒1と歴代2位のタイムで勝利しました。歴代最速は2019年グランデマーレが記録した1分58秒9ですが、馬場差補正すると2022年と2019年は遜色ないタイムだということが分かります。

そこでラップ推移を見ていくと、2019年は序盤12.0秒を連発かつ中盤以降は11秒中盤を刻み続ける早いラップ推移。この早いラップを馬群が集団のまま追走することで、距離短縮指向の追走力が問われたレースだと考えられます。グランデマーレがその後マイル戦で全体的なスピードを発揮できた場合に好成績ということからも理解できるはずです。また、終盤に向かって失速するラップ推移であること、メンバーほとんど(1~8着馬)が同様の上がりを計時していることが高速馬場を利用してなだれ込んだだけであることから、好タイムの要因は中盤が高速馬場を利してすこぶる引き締まったことだと考えられ、額面のタイムほど評価をしてはいけないレースだと考えられます。

今年のラップ推移(赤線)は、序盤早く→中盤やや緩く→終盤やや早いといったバランス。序盤の早さこそあれど2019年のような距離短縮指向のスピードが問われたとまでは言えず、中盤やや緩んでからのスパート勝負はいわゆる中山中距離のそれ。レースレベルは葉牡丹賞だけでいえば歴代ナンバーワン。レイデオロやジェネラーレウーノを軽く超えるレベルを示しており、2歳重賞優勝レベルである走りだったと言えます。これをノーステッキで悠々抜け出したミッキーカプチーノは順調ならば皐月賞日本ダービーが見えてきます。余談ですが10/9東京2000mでデビュー勝ち・12/3葉牡丹賞勝利でホープフルSへの臨戦過程はレイデオロと同じ。2戦ともノーステッキで消耗度も少ないことは好印象。ここで勝利を収めて、一気に春の主役へと名乗りを挙げてほしいと思います。

 

■ファントムシーフ

先日Tweetしたように、実質2×2の濃厚クロスが存在するファントムシーフ。ただでさえ、父Harbinger×母父Medaglia d'Oroという血統構成が日本競馬では重厚とされるなかで実質Dansiliの2×2となるといわゆるコテコテのタイプが出てくると推測できるはずです。HarbingerRail Linkを輩出した血が濃いことからクラシックディスタンスやタフな競馬で能力を発揮すると想像されるなかで、ファントムシーフが魅せたのが前走の野地菊Sです。

12.6 - 10.9 - 12.8 - 12.5 - 12.6 - 12.6 - 12.4 - 11.4 - 11.0 - 11.4 野地菊S

溜めに溜めて上がり特化のラップ推移。序盤・中盤が緩すぎてレースレベルの判断は難しいところですが、全馬たっぷり余力を持ったままスパートとなったレースで着差をつけ勝利したことは評価すべき事案です。ファントムシーフ自身のラスト3Fは11.4‐10.8‐11.3といったところ。先ほどの血統的特徴から推測されるように、日本競馬ではキレ負けの懸念があるなかでこの走りは非常に価値があるものだったと評価できます。またレース後に福永騎手が明かしているようにあえてキックバックを受ける位置取りをするなど育成も兼ねていたようです。

中距離でのトップスピードという部分では及第点が与えられます。さすがに日本主流血統を持つ馬たちよりギアチェンジ能力(≒急加速力)は劣りそうですが、それを望むのは欲張りといったところです。タフな競馬や持続力要求度が高いレースでの能力発揮が期待できることから、2歳馬にとって非常にタフな競馬となりやすいホープフルSは条件好転といえ前走よりもさらにパフォーマンスを挙げてくる可能性が期待できます。

 

■トップナイフ

36.0‐37.4‐24.8‐24.1 / 2:02.5【2:02.7】未勝利(22.09.04) トップナイフ

34.9‐38.9‐25.0‐23.3 / 2:02.1【2:02.4】未勝利(19.08.31) ミヤマザクラ 

トップナイフが未勝利勝ちしたのは札幌2000m。それまでの競馬とは一変してグッとペースを引き上げての勝利。テイエムオペラオーやステラウインドがいる母系に父デクラレーションオブウォー(欧州活躍の米国血統)を迎えた欧米色の強い血統構成から全体的スピードを活かす競馬がバッチリはまった印象。2歳札幌2000mでは歴代3位のタイムで、馬場差補正後のタイムは2分02秒7。同コースで馬場差補正タイムが2分2秒4だったミヤマザクラは未勝利後、京都2歳S2着→クイーンC1着と活躍。これに0.3差と迫っていることからもトップナイフの未勝利が好タイムであったことがうかがえます。

日本競馬的キレの成長に期待を寄せるのが酷な血統であること、札幌2000mをミドルペースから好タイムで逃げ切ったことなどから、このまま全体的スピードを活かしてクラシック前哨戦までは先行力と失速耐性を武器に頑張ってくれるだろうと見込んでいましたが、鞍上の横山典弘騎手ら陣営はさらにうえを目指していたようです。その様子が野路菊Sでうかがえます。

未勝利のパフォーマンスを見ていればスローペースに付き合わず自分でペースを引き上げていけばいいところを、あえて控える競馬を選択。逃げの策だけではこの先遅かれ早かれ行き詰まることを知る騎手だからこそ、結果を捨ててでも教育的競馬を選択したのでしょう。すぐにその効果はあらわれ、番手で競馬をすることを覚えたトップナイフは萩Sを勝利。京都2歳Sでは4角で不利を受けながらもしぶとく末脚を伸ばして2着。少しづつですが競馬の幅を広げつつあります。

血統的背景やこれまでのパフォーマンスから武器は全体的なスピードと失速耐性だと思われます。そこに一本調子な競馬だけにならないよう、教育によって少しでも末脚を引き出そうとする陣営の努力が加わっているように思えます。日本主流血統もなく、競馬も地味で人気は出ないタイプですがその走りは実に堅実です。未勝利勝ちのパフォーマンスから能力があることは示していますし、萩S京都2歳Sと連続でオープンクラスを好走している実績もあります。2歳馬にとって暮れの中山2000mはタフな舞台ですが、だからこそこのシブとさが活きるはずです。